量の確保へ日本も急ぐ

 現在、世界のSAFの生産量は年間10万kℓ程度で、航空業界の燃料消費量の0.1%にすぎない。混合できる割合は10~50%だが全く足りないのが現状だ。価格も通常のジェット燃料に比べて3倍以上高い。

 「いち早くSAFの確保に動いたのは、KLMオランダ航空や米国のユナイテッド航空、それに北欧の航空会社だ。ノルウェーのオスロ空港では既にSAFの燃料供給を開始した」と、三菱総合研究所の河岸俊輔主任研究員は海外情勢について話す。

 日本の航空会社も動き出した。JALは21年5月に50年のCO2排出実質ゼロに向けたロードマップを公表、30年に使用燃料の10%、約40万kℓをSAFに置き換えると宣言した。期限と導入目標量を示すことで、国内燃料供給事業者にSAF製造設備への投資を引き出す狙いがある。

 「退路を断ってSAFの確保に乗り出す。日本の空港でSAFを供給できなければ、世界の航空機が日本を素通りすることになりかねない」と、同社ESG推進部の亀山和哉企画グループ長は決意を見せる。

 一方、ANAも50年のCO2排出実質ゼロに向けた対策の中軸にSAFの活用を据える。フィンランドのエネルギー会社のネステとSAF供給を受ける覚書を締結した。

 「SAFの調達は日本の国際競争力に直結する喫緊の課題。国内の空港でSAFを円滑に供給できるように、インフラやサプライチェーンの整備を早急に進める必要がある」と、サステナビリティ推進部の杉森弘明マネジャは危機感を抱く。

 現在、SAFの国際規格「ASTMD7566」は、原料と製造方法の組み合せによって7種類の商業利用を認めている。最も普及しているのが、廃食油や植物油を水素で精製する「HEFA」だ。他に有機物をガス化した後、水素で精製する「FT」や、バイオマス糖や都市ごみ由来のエタノールをエチレンへ転換・重合する「ATJ」などがある(下の図)。

■ SAFの供給量の見通し
■ SAFの供給量の見通し
欧州では、政策と財政的支援を強化することで、2030年までにジェット燃料の10%をSAFに置き換えられるみている。当初はHEFAによる供給が進み、30年以降はFTやATJ、PTLが拡大する
(出所:ICAO Prestocktaking 2021)

 当面はHEFAによるSAFの導入が進むが、50年頃には大気中のCO2と再生可能エネルギーによる電力や水素を使って燃料を合成する技術「PTL」が成熟し、SAF生産量の半分以上を占めると予想されている。

廃食油の収集で先手を打つ

 国内のSAFの量産化に向けた動きはどうか。21年1月、コスモ石油は、プラント大手の日揮、バイオ燃料製造販売を手掛けるレボインターナショナルなどと共同で、使用済み食用油を原料としたSAFの事業化に取り組むと発表した。

 コスモ石油は25年までの稼働を目標に、数十億円を投じ、大阪府堺市の製油所に年産3万kℓのSAF生産プラントを建設する。「廃食油を原料とするSAFは製造技術が確立しており、商用化の確実性が高いと判断した」と、企画管理部企画渉外グループの佐藤裕平氏は話す。

 課題は、原料となる廃食油をどう集めるかだ。国内では年間約30万tの食用油が廃棄・回収されるが、燃料に利用されるのはまだ少ない。