2期目になっても、トランプ政権の方針がすぐに変わるとは考えにくい。しかし、この例に見られるように、単発的に従来の方針に反する施策を取る可能性はある。

 国際的には、パリ協定からの離脱が少なくとも政権2期目が終わる25年1月20日まで続く。協定の下では21年以降、途上国支援の資金目標を巡る交渉が予定されているが、米抜きの交渉では、途上国が期待する金額に届かせることは難しく、協定の求心力に悪影響が及ぶ恐れがある。

 他方で、1期目もそうであったように、協定脱退に反対する州政府や自治体が再エネの拡大や建物の脱炭素化といった独自施策を強化し、米国が一枚岩ではないことを対外的に示そうとするだろう。

バイデンの公約の左傾化

 バイデン氏が勝利すれば、米国の気候変動対策は大きく転換することになる。真っ先に行われるのは、パリ協定への復帰と予想される。協定復帰は、連邦議会に諮らずに、大統領の権限で国連に通告すれば可能だ。協定の規定に基づき、通告から30日後に復帰が法的効力を有することから、手続き上のハードルは低い。

 国内政策では、選挙戦中に掲げた公約の実現を図っていくことになる。今回の選挙の公約づくりで特徴的なのは、予備選を争ったバイデン氏とバーニー・サンダース氏がタスクフォースを設置し、気候変動を含む6つの分野で公約の一本化を図ったことである。

 予備選中、バイデン氏もサンダース氏もかなり踏み込んだ気候変動公約を提示し、両者で共通項も多かったが、バイデン氏は自身が副大統領を務めたオバマ政権の政策継承を強くにじませる一方、サンダース氏は「グリーンニューディール」と呼ばれる急進左派の路線を前面に打ち出し、相違点も目立った。両者が公約を一本化したことで、バイデン氏のもともとの公約よりも、グリーンニューディールに寄ったものになった。

 公約の統一後、バイデン氏は50年までに米国全体でネットゼロ排出を実現するとの長期目標を掲げ、その達成に向けて、部門別の規制を導入すると提案した。電力部門に対しては、35年までに全発電を炭素フリーとするため、技術中立的なクリーン電力基準を導入するとした。

 「技術中立」とは、CO2ゼロ排出であれば再エネだけではなく原子力発電やCO2回収利用・貯留(CCUS)付きの火力発電も認めるという意味である。もともと、バイデン氏は50年までにクリーンエネルギー100%との目標を掲げつつ、原子力とCCUSも否定しない立場だったが、サンダース氏は30年に再エネ100%としており、両者の中間点がこの形だった。米国最大の排出部門となった運輸部門については、野心的な燃費基準を設定し、ゼロ排出車の導入を加速させるとした。建物については、30年までに全ての新設商用ビルをゼロ排出化する新基準を立法すると掲げた。

どちらの候補が勝つかによって、米国の気候変動対策は全く異なるものになる。「CCUS」はCO2回収利用・貯留技術のこと
(写真:UN Photo/Cia Pak(上)、UN Photo/Evan Schneider(下))