「環境正義」の実現も公約

 その上で、単にゼロ排出化するだけではなく、その実現に向けた政府の巨大な財政支出を通じて、他の社会問題の同時解決も目指す。バイデン氏は政権1期目の4年間で、持続可能なインフラとクリーンエネルギーに2兆ドル(211兆円)を投じると公約し、投資を通じて、以下の2点を実現するとした。

 第一に、新規雇用の促進による中間層の拡大である。排ガスゼロ車(ZEV)や電気自動車(EV)の充電ステーションなどへの投資によって、自動車産業とそのサプライチェーン、自動車インフラの分野で100万人の新規雇用を生み出し、建物の改修や住宅の耐候化への投資でも100万人以上の雇用を創出するとの目標を掲げた。

 さらに、こうした新規雇用に対して、労働組合への加入権を認めるべきとし、労働者保護の姿勢を鮮明にした。また、雇用拡大を支えるべく、連邦政府の関連投資に際して、米国産購入(バイ・アメリカン)を条件付け、製造業の国内回帰を促す。

 第二に、「環境正義」の実現である。社会的に不利な状況に置かれているコミュニティが気候変動対策による恩恵から取り残されないように重点支援する。具体的には、連邦政府によるクリーンエネルギー、クリーン交通、サステナブル住宅などへの投資による便益の40%をこうしたコミュニティが享受できるようにするとの目標を掲げた。

 対象コミュニティの選定に当たっては、「気候・経済正義スクリーニングツール」を開発し、気候変動の悪影響、その他の環境汚染、経済や人種の側面での不平等によって脅かされているコミュニティを特定する。貧困や人種差別など、米国が抱える社会問題解決への寄与を強く打ち出した。副大統領候補に指名されたカマラ・ハリス氏も上院議員として環境正義の実現を重視してきた。

 しかし、バイデン氏が大統領選挙で勝利しても、こうした野心的な政策構想がそのまま実現する保証はない。公約を実現する手段には、既存法の下での行政権限に基づく規制強化と、議会による新規立法の2つがあるが、どちらも容易ではない。

副大統領候補に指名されたハリス氏(右)は、上院議員として環境正義を重視していた
(写真:AP/アフロ)

公約の実現に障壁

 規制強化については、自動車の燃費基準のように既存法での行政権限が明確なものもあれば、電力部門のクリーン電力基準のように新規立法を必要とするのか、既存法の援用が可能なのか微妙なものもある。

 また、既存法の下で規制を策定できるとしても、公約通りの大胆な内容を実現できるかは不透明である。規制強化は、最終的には司法の判断に委ねられるが、保守化傾向にある連邦最高裁が大胆な規制を支持するかどうかは見通せない。