江守 正多/国立環境研究所 地球システム領域副領域長

地球温暖化はどこまで進んでいるのか。100年後は、その先はどうなるのか。国立環境研究所の江守正多氏が最新のIPCC報告書を基に解説する。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2021年8月に発行した第6次評価報告書(AR6 WGⅠ)は、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない(unequivocal)」と断定した。今ごろやっと断定したのかと思う方もいるだろうが、シミュレーションの不確かさや自然変動があるため、01年の第3次評価報告書では「人間活動が主な原因である可能性が高い(66%以上)」、07年の第4次では「可能性が非常に高い(90%以上)」、13年の第5次では「可能性が極めて高い(95%以上)」と、統計学的に見て「人間活動が主な原因とまではいえない可能性」が少し残っていたのだ。

複数の証拠を基に断定

 AR6では複数の証拠を総合的に評価して、強い結論を導いた。人間活動による主な影響は、温室効果ガスの増加により赤外線が宇宙に逃げにくくなり地球を暖める効果から、大気汚染物質(エアロゾル)の増加により地表に到達する日射が減り地球を冷やす効果を差し引いたものである。地球が余分に受け取るエネルギーが、気温の上昇のみならず、海洋の温度上昇、雪氷の減少などと辻つまが合うことが、複数の証拠により明瞭に説明できるようになった。

 産業革命前の気温に近いと考えられる1850~1900年と比較して、2010~19年の地球の気温上昇は、観測された実際の上昇が1.06℃に対し、人間活動の寄与は1.07℃と評価されており、誤差の範囲内で100%が人間活動の影響といえる。

 科学的な理解の向上に加えて、1つ注目すべき証拠は、前回の第5次評価報告書が出た13年から現在にかけて、地球の気温が大幅に上昇したことだ。これは主に、地球の気候が元々持つ性質である自然変動によりたまたま生じたことであるが、ちょうど13年までの10年程度の期間は気温上昇が停滞しており(ハイエイタスと呼ばれる)、前回は「最近は上がっていませんが、これからまた上がるはずです」と説明せねばならなかった。今回は「ほら、やっぱり上がりましたね。人間活動のせいですよ」というわけだ。

 もう一つの重要な証拠は、近年の気温上昇が過去数千年にわたって前例のないものであることが明瞭になった点だ。例えば1000年前ごろには「中世の温暖期」があって、太陽活動の影響などで地球の気温は変動を繰り返しており、近年の温暖化もそれと同程度だとする、根強い懐疑論があった。しかし、木の年輪や珊瑚の骨格などから過去の気温を推定する古気候復元研究が精緻化された結果、中世の温暖期は地球規模の温暖期ではないことなどが分かった。

■ 過去2000年間で前例のない速度で温暖化が進む
■ 過去2000年間で前例のない速度で温暖化が進む
左のグラフは過去2000年間の世界平均気温(10年平均)の変化。灰色の実線は古気候学により復元された値で、1850~1900年を基準とした変化。黒の実線は直接観測された全球表面温度の変化(1850~2020年)。右のグラフは1850年から現在までの世界平均気温(年平均)の変化。黒の実線は観測値。人間と自然の両方の要因を考慮した推定値(茶色)と、自然要因(太陽と火山活動)のみを考慮した推定値(緑色)と比較した
(出所:IPCC AR6 WGⅠ Figure SPM.1)
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気温上昇の予測精度が向上

 将来の気温上昇の予測精度も、今回のAR6では格段に高まった。

 地球の気温の上がりやすさを表す基本的な指標として、仮に大気中のCO2濃度を倍増させて(熱容量が大きい海の温度上昇が完了するまで)十分時間が経ったときに、地球の平均気温が何℃上がるかを表す「平衡気候感度」(Equilibrium Climate Sensitivity; ECS)がある。今回の報告書では、ECSの推定を「2.5℃から4℃の可能性が高く(66%以上の可能性)、最良の推定値は3℃」と結論した。