将来のさらなる温暖化の進行に伴って、極端現象の頻度と強度がさらに増す。これは上述した理由を理解していただければ、明らかだろう。
例えば、産業革命前に50年に1度しか起きなかったレベルの極端な高温は、現時点(地球の平均気温が約1℃上昇)で既に4.8倍の頻度で起きるようになっている。これが、平均気温上昇が1.5℃になると8.6倍、2℃になると13.9倍と増加していく。さらに、もしも平均気温が4℃上昇すると39.2倍というから、ほぼ毎年のように起きるということだ。

(出所:IPCC AR6 WGⅠ Figure SPM.6)
5つの排出シナリオを設定
AR6では、将来の気候変動の見通しを5つのシナリオに基づいて評価している。
共通社会経済経路(Shared Socio-economic Pathways; SSP)と呼ばれる今回のシナリオ群は、社会経済の将来見通しのバリエーションと、前回の第5次評価報告書(AR5)で用いられた代表濃度経路(Representative Concentration Pathways; RCP)とを組み合わせたものである。SSPに続く数字は社会経済経路の番号、その後のハイフンに続く数字はRCPと同様で2100年におけるおよその「放射強制力」(W/m<2)、つまり温暖化を引き起こす強さを表す。
排出量のレベルに関していえば、SSPの使い方はRCPのときと同様である。「非常に低い」排出レベルのSSP1-1.9は、今世紀半ばに世界のCO2排出量が実質ゼロ、その後マイナスになり、パリ協定の「1.5℃」目標に対応する。「低い」排出レベルのSSP1-2.6は、2070年代にCO2排出量が実質ゼロになり、「2℃」目標に対応する。「中間」のSSP2-4.5は、今世紀末までCO2排出量が実質ゼロにできず、2℃以上温暖化する。「高い」SSP3-7.0は今世紀にわたって排出量が増え続け、4℃近く温暖化する。「非常に高い」SSP5-8.5はさらに温暖化が進む「最悪シナリオ」だ。
いずれのシナリオの場合でも、今世紀半ばまでは気温上昇が続くと見通されており、2021~40年の平均気温が産業革命前よりも1.5℃上昇に達してしまう可能性は五分五分以上とされた。しかし、「非常に低い」SSP1-1.9であれば、その後1.5℃前後で気温は安定化する。

(出所:IPCC AR6 WGⅠ Figure SPM.4)