サステナビリティ委員会の役割は、基本方針や戦略をサステナビリティの観点から深掘りして監督することだ。一部の企業では、評価指標の設定や実際の進捗状況、ステークホルダーとのコミュニケーションまで踏み込んでいる。

 取締役会の議論には時間の制約がある場合が多い。そのため、専門家を交えてより深い議論と監督が必要と思われる場合にサステナビリティ委員会を設置する流れになる。米国と英国で委員会の設置が増えているのは、経営判断においてサステナビリティの比重が質・量ともに増え、取り組みを監督する必要性が高まっていることの証しといえる。

日本の委員会は執行組織

 では、日本企業における取締役会のサステナビリティ対応は、どのような状況だろうか。

 日本でも、サステナビリティに関する重要性の認識は高まっている。コーポレートガバナンス・コードや、それに関する様々な実務指針でサステナビリティの取り組みが要請され、スチュワードシップ・コードの再改訂では、機関投資家もサステナビリティへの配慮が求められた。

 実際、TOPIX100企業における8割以上の企業がCSR委員会などサステナビリティ関連の委員会を設置している。ただし、これらの委員会の多くは、執行側(多くは社長やCEO)の諮問機関である。一部の企業は取締役会の諮問機関としているが、委員長は執行側から出されている。現状、執行側を監督する位置付けとしてサステナビリティ委員会を設置している日本企業は、ほとんどない。

 取締役会が扱う議題についても、ESGなどサステナビリティに関する議論をしている企業は存在するが、あくまでも「議論」にとどまっているケースがほとんどだ。戦略の進捗状況の監督や、コミットしている指標の達成状況を確認するという段階には至っていない。

 なぜ日本企業は、サステナビリティの取り組みがガバナンスに組み込まれていないのか。この理由として、サステナビリティに関する議論をリードし、適切な監督を行うためのスキルやノウハウを有した取締役が不足していることが一因と考えられる。下の表は、取締役(日本企業は監査役を含む)が保有するスキル状況を整理したものである。米国や英国企業と比べて日本企業の取締役会におけるスキル保有率は全体的に低く、サステナビリティやESGに関するスキルやノウハウを有する取締役が十分に確保できていないことが分かる。

■ 日米英の取締役会のスキル保有状況
■ 日米英の取締役会のスキル保有状況
注:上の値は、当該スキルを持つ人数を取締役総数で割ったもの。日本企業は監査役も含む。米国はS&P100 の98 社平均、英国はFTSE100 の77 社平均、日本はTOPIX100 の100 社平均。赤字はESG に関する項目
(出所:各社の株主総会招集通知、年次報告書、有価証券報告書(2018年)を基に日本総合研究所作成)
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 もっとも米国や英国企業においてもサステナビリティに関する人材の確保は十分とはいえず、共通の課題といえる。いずれにしても、今後を考えると、サステナビリティ領域に通じた独立社外取締役の確保はもちろん、今の取締役に対するサステナビリティの知識や対応能力の底上げが必要といえる。

 日本企業の最大の課題は、外部のステークホルダーの目線で監督がなされていないというところにある。執行サイドのサステナビリティの取り組みに対して、独立社外取締役を中心にした取締役会が監督するという仕組みを、人材の確保を含めて整備する必要がある。

 現在、日本の取締役会は、執行と監督を分離する「モニタリングモデル」に、急速に変化している。サステナビリティやESGの取り組みに関しても、社外取締役を中心とした外部の目で進捗を監視・監督するという視点が求められる。