上野 貴弘/電力中央研究所 上席研究員

11月3日に行われた大統領選挙の結果、民主党のジョー・バイデン候補が次期大統領に当選したと報じられている。共和党のドナルド・トランプ大統領は敗北を受け入れず、法廷闘争を続ける構えであり、その帰趨はまだ見通せないが、2021年1月20日にバイデン氏が大統領に就任すると想定して、米国の気候変動対策がどう変わるのかを考える。

バイデン氏は11月7日、米大統領選の勝利演説で「アメリカ人は気候を制御して地球を守る戦いを求めた」と言及した(写真:AP/アフロ)

最初に活発化するのは外交

 政権発足直後から活発化するのは気候変動外交である。バイデン氏が就任当日にパリ協定に復帰することを公約しているためである。トランプ大統領は17年6月1日にパリ協定脱退の意向を表明し、協定の脱退規定に沿って19年11月4日に脱退を正式通告し、選挙翌日の20年11月4日に脱退が一旦、法的に確定した。しかし、米国は大統領の権限でパリ協定に参加可能であり、バイデン大統領が再加入を通告すれば、協定の加入規定に沿って、その日から30日後に正式復帰となる。つまり、協定復帰は手続き的に容易であり、速やかに実行できる。

 さらに、バイデン氏は、就任100日以内に主要排出国による首脳会合を招集して、国別削減目標の強化を働きかけると公約している。新型コロナウィルス感染症が収束しない中で首脳会合をいつ開催できるかは見通せないが、国別目標の引き上げが焦点となっている気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が21年11月に開催されることになっており、COP26に向けて米国による他国への働きかけが活発化する。

 また、中国による海外石炭火力への多額融資を念頭に、高炭素プロジェクトの輸出補助停止に関するG20合意を目指すとしている。海外石炭火力への公的融資の制限は、オバマ政権期の2015年に先進国を中心とする経済協力開発機構(OECD)の会合で合意されたが、その合意を強化する再交渉を行いつつ、中国、インド、ロシアなどOECD合意の外側にいる主要国に対しても網を広げる努力を始めることになる。

 削減目標強化と石炭融資制限の両方で焦点となるのが中国である。民主党の政策綱領は「気候変動対策に関する説明責任を推進し、中国などの国々が他国に汚染をアウトソースしないように統一戦線を動員する」と強く迫る一方、「気候変動や核不拡散など相互利益がある課題では中国との協力を追求」ともしており、硬軟織り交ぜた対応が予想される。

 トランプ大統領が拒絶したパリ協定の下での途上国支援については、政府予算の制約はあるものの、オバマ政権がそうしたように、行政府の裁量で使途を決められる予算を充当する形で段階的に再開していくものと予想される。