津田 啓生/みずほリサーチ&テクノロジーズ コンサルタント

CO2削減を狙った導入が進む一方、手法や実態が分かりづらい面もある。投資促進や投資家へのアピールにもつながるため、戦略的な活用が期待される。

 企業が自社のCO2排出に価格を付けるインターナルカーボンプライシング(社内炭素価格)の導入企業が急増している。世界で約850社、国内約100社が導入しているという。

米マイクロソフトのブラッド・スミス社長は「カーボンネガティブ」達成のため社内炭素価格を活用していくと説明している。写真は2020年1月の同社説明会<br><span class="fontSizeS">(写真:マイクロソフト)</span>
米マイクロソフトのブラッド・スミス社長は「カーボンネガティブ」達成のため社内炭素価格を活用していくと説明している。写真は2020年1月の同社説明会
(写真:マイクロソフト)

規制と社内炭素価格は違う

 脱炭素に幅広く効果があるとされ、期待の大きい仕組みであるが「導入企業による公開情報では運用実態が分からない」との声も多い。筆者が企業の導入を支援した経験を基に、社内炭素価格の導入のポイントを実務面から解説したい。

 社内炭素価格は、政府によるカーボンプライシング規制(CP規制)と混同されやすい。いずれもCO2排出への価格付けである点や、「排出に価格を付けると、低排出な取り組みほど経済合理的になる」という考え方に基づく点は共通だ。しかし、企業にとっての意味合いは異なる。

 CP規制は、国や地域を対象とする政策手法だ。導入すれば、社会全体に削減を促す強いシグナルとして機能する。他方、課税や排出枠取引によって経済的負担が生じるため、これを負担とみなす企業は少なくない。

 対して社内炭素価格は、企業の自主的な取り組みだ。資金のやり取りは必須ではなく、価格水準も企業の裁量次第。影響を与えたい意思決定プロセス(投資判断、経営判断など)にピンポイントで適用できる。金銭的負担の生じない設計も可能なため、導入のハードルは高くない。

■ 炭素価格(カーボンプライシング)の仕組み
■ 炭素価格(カーボンプライシング)の仕組み
CO2の排出に価格を付ける仕組み。低排出な活動ほど、経済合理的になる
(出所:みずほリサーチ&テクノロジーズ)