三井住友銀行ホールセール統括部サステナブルビジネス推進室の清水倫氏は、「地域企業におけるSDGsの取り組みを金融面からサポートすべく、効果的な制度融資の在り方を模索している。20年度以降、Y-SDGsの地域金融機関による活用が広がるように検討を進めていきたい」と語る。

 登録認証制度の構築後、自治体の期待は地域の金融機関に向かう。SDGsに内包される地域の社会的課題の解決に向け、企業や事業への新たな資金の流れを生み出す立場だからだ。

 新政権発足後、地域の金融機関へ向けられる目は厳しさを増す。オーバーバンキングという言葉は、地域の経済規模に対して金融機関数、行職員数が多いことを指す。事実、20年3月期の国内銀行109行の預貸ギャップ(預金と貸出金の差額)は、11年連続で拡大し282兆円だった。貸し先が不足する「カネ余り」状態だ。このまま地域経済が縮小すると、従来と同じ金融活動では貸し先は縮小の一途をたどる。

 だからこそ、地域の金融機関には社会的課題の解決に向けた新たな金融が期待されている。自治体は、地域の社会課題の解決を中央からの補助金だけに頼ってはならない。ヒト・モノ・カネを総動員し、地域事業者と一緒にSDGs視点での新ビジネスの創出が求められている。中長期的には、そうした地域こそESG投資の対象として魅力的に映るはずだ。地方創生SDGsを一過性のネットワーキングにとどめないためには、地域金融との連動が不可欠だ。

活用に向けた3つのヒント

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、地域経済は大きな打撃を受けた。内閣府は、地域経済を支える地方公共団体のため、20年度第1次・第2次補正予算で計3兆円もの地方創生臨時交付金を設定し、止血を進めてきた。

 このような緊急事態下、自治体は地方創生SDGs金融を普及できるのか。「ESGの取り組みや、SDGs達成への貢献に貴重なリソースを割いている余裕がない」という地域金融機関や地域企業が多いのも事実だ。しかし、次世代の大きな負債となる財政出動が行われるからこそ、中長期的な視野で経済・社会・環境への好影響や持続可能性という視座を持つことが必要ではないだろうか。

 地方創生SDGs金融の普及に重要なのは、防災分野で定着した「ビルドバックベター(より良い復興)」の発想だ。災害後の復旧フェーズにおけるインフラ、社会システム、生活・経済・環境の再生に、将来のリスク軽減策を考慮することで、国やコミュニティをより強靭で持続可能なものに再興することを指す。これを地方の文脈でいうなら、コロナ禍からの復興と併せ、長期にわたり地盤沈下してきた地域経済の復興も一緒に進めるということになる。

 最後に自治体と地域金融機関向けに、地方創生SDGs金融の普及のための具体的な取り組みのヒントを3つ挙げたい。

 1つ目は、SDGs金融の起点となる機関投資家や金融機関との共通言語を持つことだ。自治体や地域金融機関は、地域企業の事業活動をESGやSDGsといった共通言語で魅力的に見せられるかが重要だ。例えば、都市部のサプライチェーンを支える重要な地域といった見せ方もあれば、ワーケーション(リゾート地でのリモートワーク)で多くの都市人材の働き方改革を応援する地域という見せ方もある。

 2つ目は、SDGsの取り組みを地域全体での面的な取り組みとすることだ。どの地域でもSDGsの視点から優れた取り組みを行う企業は存在する。しかし点在したままでは、ビジネス規模も小さいまま、地域経済全体の魅力には反映されにくい。自治体や地域金融機関は、複数の企業の取組みを取り上げ、前出した地域のネットワークを通じて、横展開やビジネス拡大のためのマッチングもできる。地域企業に近い地域金融機関に求められる新たな役割とも言える。

 3つ目は、評価と情報開示だ。前出した内閣府の調査においても、9割の機関投資家が地方創生への関心があるが、具体的な投資活動はその2割しか実行しておらず、情報開示や投資分析が十分に進めば潜在的な投資家層が一定数いることが確認された。未来都市に選定された都市は地域特性に応じたSDGsの目標やKPI(重要業績評価指標)を設定している。自治体は地域企業や地域金融機関の協力を得ながら、設定したKPIの達成に関する情報開示を進めていく必要がある。

■ 自治体や地域金融機関への3つの提言

 自治体は少子高齢化や経済停滞に悩む一方、地域金融機関の現状には新政権下で厳しい視線が向けられている。地方創生SDGs金融の名の下、自治体や地域金融機関が地域にESG投資を引きつけ、資金循環を創出し、「より良い復興」を早急に進める必要がある。長引くコロナ禍中、ESGやSDGsへの取り組みは手間のかかる面倒なことではなく、地域経済の再生に必要な取り組みになりつつある。