GPIFのESG投資に採用されているFTSE のインデックスが2021年6月に基準を大幅に変える。気候変動の基準を見直すことで、約1割の日本企業に除外の危険性が出てきた。
FTSEラッセルは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2017年からESG投資に活用している「FTSE Blossom Japan Index」に、小型株を初めて追加することを20年12月に発表しました。小型株を入れるのはなぜですか。
ヘレナ・ファング 氏(以下、敬称略) FTSE Blossom Japan Indexは毎年6月と12月に銘柄を組み替えています。20年3月末時点の全銘柄は181銘柄。連動するGPIFのパッシブ運用資産総額は9314億円でした。ここに小型株を組み入れることで、市場全体のESGの底上げを図りたいと考えました。そこで20年12月、12銘柄の小型株を追加しました。

銘柄数や運用資産額は2020年3月末時点
小型株組み入れで中小企業牽引

2008年からESGと持続可能な投資のエキスパートとして活躍。アジアのファミリー・オフィスでESG統合、株式分析などを担当した後、FTSEラッセルに入社。英ロンドンで、ハーミーズ・インベストメント・マネジメントの責任投資部門で顧客対応のグローバルヘッドとして、年金基金や資産運用会社が持続可能性の基準をポートフォリオに統合することを可能にした。14年に香港に移り、現職 (写真:FTSE ラッセル提供)
現時点で小型株の企業で指数会社のESGの要件・基準を満たすところはそれほどありません。しかし、長期的なESGの動向を考えた際、大企業だけでなく中小企業にも持続可能性や市場の要求を理解してもらいたい。それにより投資家と中小企業のエンゲージメントを促したいと考えています。中小企業がESGを身近に感じ、要件を満たす企業が増えるという期待感を持っています。
もう1つの理由は、他のアジアの企業も巻き込みたいと考えるからです。日本の投資家はアジア太平洋地域のサステナブル投資の先頭に立っています。ESGインデックスに小型株を追加することで、企業の大小にかかわらずESGに優れた企業への投資を喚起するとみています。
ESGを認識することで企業のパフォーマンスが向上すれば、受益者に恩恵を与えることにもつながります。小型株の組み入れについて投資家から要求があったのも事実です。
FTSEは企業をどのように格付けし、ESGインデックスを作っていますか。格付けの特徴を教えてください。
ファング 我々は世界7200以上の上場銘柄のESG格付けを行い、サステナブル投資のインデックスやデータを提供しています。サステナブル投資関係のインデックスは約350あり、そのうち約250がESGを組み入れたインデックス。FTSE Blossom Japan Indexもその1つです。残り100インデックスには気候関係や不動産セクターのグリーンインデックスがあります。
14テーマ、300指標で採点
我々は企業をESGの14テーマについて約300指標で採点しています。業種や事業内容、活動地域によって300指標の全てを使うわけではなく、企業ごとに約125指標だったりします。
指標はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)やGRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)、SASB(サステナビリティ会計基準審議会)などの国際基準に基づいて作り、第三者委員会が承認して透明性を担保しています。14のテーマ間や指標間の重みづけをして企業を0~5点で採点します。例えばFTSE Blossom Japan Indexでは、3.3点以上を組み入れています。
スコアリングに関して、企業にはどの公開情報のどこから取ったか分かるようにしています。また、同業他社5社を抽出し、企業名を伏せ、E、S、Gの各スコアとESG総合スコアをグラフで示し、自社の位置づけが分かるようにもしています。
企業から「正当な評価ではない。この情報も入れてほしい」という要望もあります。専門チームが企業と緊密に対話しています。