需要国側の企業がロシア産資源を忌避する動きもある。英シェルがロシア極東で開発中の石油ガス開発プロジェクト「サハリン2」からの撤退を表明し、米石油大手エクソンモービルも「サハリン1」からの撤退が報じられた。英BPも、2割弱保有するロシア石油大手ロスネフチ株を手放し、ロシアでの資源開発事業から撤退するという。

 一方、日本からは、サハリン1に伊藤忠商事や丸紅、INPEXなどが、サハリン2は三井物産や三菱商事が出資している。特にサハリン2は、「日本のプロジェクト」との見方も根強い。どうなるとみているか。

米欧とは異なる日本の事情、サハリン1・2どう対応

小山 まずロシアでのエネルギー開発などのプロジェクトに、日本企業が新たにコミットするような新規投資は相当に難しいだろう。ただ、サハリン1や2のような既存プロジェクトは、また別の考え方が採られるのではないか。

 日本とロシアには、16年5月の日露首脳会談で当時の安倍晋三首相が提示した8項目の「協力プラン」にプーチン大統領が賛意を示し、互恵的な協力を進めることになった経緯がある。エネルギーも柱の1つとなっていた。一方で、14年のクリミア併合を踏まえて欧米による対ロシア経済制裁が進んでいた中、日本がどれだけ投資できるか慎重な見方もあった。今回のウクライナ侵攻を踏まえ、日本企業が新規に、あるいは日本政府が日本企業を支援する形で新規投資できるかを問われれば、相当に難しいだろう。

 他方で、既存の案件、その典型であるサハリン2は、日本の政府や企業による自主開発案件として、日本のエネルギー安定供給のために相当な努力を払って進めきたものだ。これをどうするか、判断は非常に難しい。悩ましい問題だろう。

 シェルやBPらの撤退は、今のロシアの行動を変えるために相当に思い切ったことやるべきという覚悟や決意の下に発表したのだろう。力による一方的な現状変更は許さないという、国際秩序の根幹となる原則を日本も守っていかなければならず、これを実践し、先進国の間の結束を重視すべきである。

 しかし、これを踏まえた上でも、即時サハリンから撤退する状況とも言えないだろう。なぜか。日本は、米国のようにエネルギーを自給自足できる国ではない。欧州ほどロシアへの依存度は高くないが、中東への依存度が高い。エネルギー安定供給の観点で言うと、日本は非常に脆弱だ。供給源の分散化を図り、エネルギー安定供給のために取り組んできた成果の1つが、サハリンプロジェクトだ。

 G7(主要7カ国)の結束を重視しながら、西側、特に米国と折衝や交渉をし、相当に慎重な判断をしなければならない。そういった難しい状況にある。

 米国は禁輸について主に欧州の同盟国と協調するだろうが、日本が同調を求められた場合の対応も大きな問題となろう。

ロシアに代わるエネルギー供給源は。

小山 石油は代替供給源があると言っていい。サウジアラビアを中心とした中東湾岸の産油国には、使わずに余力としてとってある石油の供給能力がある。供給能力の100%をフル稼働させずに、戦略的・意図的に余剰能力を残している。サウジアラビアなどは、余剰能力を需給の調整力として管理してきた。

 仮にロシア産石油の供給が減った場合も、サウジアラビアがその気になれば、要するに「バルブをさらに開ける」決断をすれば増産できる。代替供給源がゼロではないという意味では、相対的に石油市場の方が問題への対応が物理的に可能だ。

 既にサウジアラビアに対して米国が増産を打診したものの、両国の関係もあって一筋縄ではいかないのも事実。ただ、最終的に供給途絶が起これば、増産に踏み切ると予想している。

 一方、天然ガスやLNGには余剰能力が存在しない。どの産ガス国・地域も、基本的に供給能力の100%を売り切っている。仮にロシア産天然ガスが何らかの形で途絶した場合、その供給低下を補填することはできず、縮小した供給力のパイを需要国が取り合う争奪戦になるとも見込まれる。ガスの方がインパクトが深刻で大きくなりそうだ。

■日本は中東産油国からの原油輸入が多い
■日本は中東産油国からの原油輸入が多い
出所:経済産業省「資源・エネルギー統計年報」