自然は定量化や管理が難しいと言われます。TNFDによる開示では定量化が必要になるでしょうか。

シュタイナー 確かにTNFDは難しい挑戦です。測定基準、財務開示のためのメトリクス(評価尺度や指標)をつくる作業が始まりますが、どんな開示になるかはこれからです。しかし、火星に着陸するほどの困難を伴う挑戦だとは思いません。

 開示フレームワークは実用的で理解しやすく、透明性のあるものにしなければなりません。透明性を提供することで、投資家はポジティブな影響を及ぼす企業に投資でき、消費者はそうした企業の商品を買うことができます。

 欧州では、財務面のマテリアリティと、自然に対する影響や依存などの環境・社会面のマテリアリティを「ダブル・マテリアリティ」と呼んでいます。先日、米国の中央銀行に当たる米連邦準備理事会(FRB)の総裁が、「気候変動は金融の安定化に直接影響を及ぼす懸念材料だ」と明言しました。この考え方は、自然にも当てはめる必要があると私は考えています。森林の伐採や水源の汚染は人や経済に大きな影響を与え、経済の不安定化につながる可能性があります。自然のリスクや機会を、金融の意思決定に組み込む必要性があります。開示は前向きな意思決定をする鍵となります。

SDGsに資する事業を認証

UNDPは持続可能な開発目標(SDGs)を推進しています。「事業や投資がSDGsに貢献していること」を国連が認証する「SDGインパクト」基準を策定中ですね。

シュタイナー その通りです。「企業などの事業」「債券」「プライベート・エクイティファンド(PEファンド)」に分けて基準をつくっています。基準を満たした事業や金融に「SDGインパクト認証」というお墨付きのハンコを与えるプロジェクトを進めています。PEファンドの基準は20年10月に策定し、現在、認証を与えるためのアシュアランス(保証)のシステムをつくっています。債券の基準はまもなく発表予定。事業の基準も草案ができました。

 開発中の基準は、SDGsに資する資本の流れを増やすことに主眼を置いています。グリーンボンドを発行したい企業もあるかもしれませんし、株式発行で資本を手に入れたい企業もあるかもしれません。金融機関は「この取引はSDGsに資するか」を知りたがっています。それを可能にするツールが我々の「SDGインパクト」基準です。

 グリーンボンドを発行する企業は「どのようなインパクト・パラメーターを使えばよいのか」という投資家との合意形成に役立ちますし、インパクト投資を受けたい企業は投資家に自らの立場を明確にしやすい、そんなツールをつくっています。

 基準づくりには、インパクト投資を行う金融機関も協力しています。グテーレス国連事務総長が中心となり、SDGs達成に向けて民間資金動員を加速する投資家ネットワーク「Global Investors for Sustainable Development Alliance(GISD)」を発足させました。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や英アビバなど30の金融機関のCEO(最高経営責任者)が参加しています。

UNDPは事業や投資がSDGsに貢献していることを認証する基準、「SDGインパクト」基準をつくっている。事業、債券、PEファンドの3タイプで策定中だ。基準を満たした事業や投資には認証が与えられる
UNDPは事業や投資がSDGsに貢献していることを認証する基準、「SDGインパクト」基準をつくっている。事業、債券、PEファンドの3タイプで策定中だ。基準を満たした事業や投資には認証が与えられる