累計約170万台の電気自動車(EV)に電池を供給してきたパナソニック エナジー。米テスラ向けに最先端のリチウムイオン電池を開発、高容量化とコバルトフリーで業界をリードする。材料価格の高騰や欧州などで強化される環境規制にどう立ち向かっていくのか、渡邊庄一郎副社長執行役員CTO(最高技術責任者)に戦略を聞いた。(聞き手は、日経ESGシニアエディター 高木邦子)
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――世界のEV電池市場で10%のシェアを確保していく方針を掲げているが、どのように存在感を出していくのか。

渡邊氏(以下、敬称略) 現在、EV市場を牽引しているのは米テスラと、国策としてEV産業を育成している中国だ。そのテスラのEVを当社は2008年から支えてきた。航続距離の長いEV向けの高容量リチウム電池に当社の強みがある。実際に、航続距離が要求される北米で強い事業基盤を有しており、同様に航続距離のニーズが高い欧州でも強みを発揮できると考えている。

――テスラをはじめ自動車大手は電池コストの削減を狙い、電池の内製化を進める動きが見られる。電池メーカーとしては供給先の自動車メーカーを広げることも視野に入れているのか。

渡邊 取引相手が1社に偏るのは事業として脆弱なのでそこは解消したいと思っている。とはいえテスラの生産規模は大きく、当社の独自性を出してしっかりと取り組んでいく。最近中国の躍進が目立つEV電池市場だが、やみくもにシェアを取りにいこうとは考えていない。生産規模が大きければそれだけコストが安くなるかといえば必ずしもそうではない。10%以上のシェアを確保し、複数社から電池材料を安定調達できるサプライチェーンを構築していく。

渡邊 庄一郎 氏 パナソニック エナジー 副社長執行役員 CTO(最高技術責任者)
渡邊 庄一郎 氏 パナソニック エナジー 副社長執行役員 CTO(最高技術責任者)
1966年奈良県生まれ。大阪府立大学大学院工学博士課程修了。90年松下電器産業入社。2009年パナソニック エナジー社技術開発センター所長、18年同社AIS社テスラエナジー事業部長兼パナソニックエナジーノースアメリカ社長を経て、22年より現職 (写真:パナソニック エナジー)

――国際エネルギー機関(IEA)の報告書は、電池の価格、特に鉱物資源の価格高騰がEV普及のボトルネックになると懸念を示している。

渡邊 電池の材料となる鉱物の価格が高騰しているが、問題を2つに切り分けて考える必要がある。

 1つはリチウムのように埋蔵量が十分あるが、短期に需要が集中して価格上昇が起きている鉱物への対応。これについては時間が経てば需給が調整されていくとみている。当社は電池生産で長年高いシェアを確保しており、材料メーカーと良好な関係を築けている。長期の供給契約を結んでいるため、現在も材料調達で困る状況にはない。

 もう1つは、コバルトやニッケルのように埋蔵量に限界があるレアメタルへの対応だ。特に紛争鉱物とされるコバルトは、EVにはいずれ搭載できなくなるというのは見えていた。当社は06年に正極材料にニッケルとアルミニウムを加えた(NCA系)電池を実用化し、以降も使用量を削減するための開発を進めてきた。現行製品ではコバルトの使用率は5%以下になっており、業界をリードしている。

 さらにコバルトを使用しない、コバルトフリー電池の開発も技術的にはほぼ確立している。現在テスラと性能評価など量産化に向けた話し合いを進めているところだ。