ノーベル賞を受賞したWFPは、人道支援にDXを活用している。ブロックチェーンや水陸両用車の導入など、コロナ禍でイノベーションを加速する。

国連世界食糧計画(WFP)は、食料支援や飢餓撲滅などに取り組んできた実績を評価され、2020年にノーベル平和賞を受賞しました。おめでとうございます。

エンリカ・ポルカリ 氏(以下、敬称略) ありがとうございます。今回の受賞はWFPの約2万人のスタッフ全員で頂いたものです。受賞が私たちの活動の背中を押してくれていると感じています。

世界は飢餓や食料問題に直面しています。新型コロナウイルス感染症が追い打ちをかけています。

ポルカリ 紛争、気候変動、経済的な困難によって人類は飢餓の問題に直面してきました。今も何百万人もの人々が家を追われています。新型コロナはそこに新たな問題を上乗せしました。食料のサプライチェーンが分断され、食料支援が難しくなっています。支援を迅速に適切な場所に届けられるか、1秒1マイルが生死の分かれ目になっています。

ドローンが水陸両用車を先導

コロナ禍の課題は何ですか。

エンリカ・ポルカリ氏
国連世界食糧計画(WFP) 最高情報責任者 兼 技術ディレクター
伊ミラノ大学で社会科学の修士号、ローマ・トル・ヴェルガータ大学で国際調達管理の修士号を取得。米スタンフォード大学のロイター・デジタル・ビジョン・フェローシップ・プログラムのフェロー。WFPが主導する「緊急通信クラスター」の議長、世界経済フォーラム「ドローンと空中モビリティ委員会」委員を務める(写真:WFP/Rein Skullerud)

ポルカリ WFPは食料支援団体だと思われがちですが、3つの役割を担っています。1つは銀行の機能です。我々は人道的に弱い立場にある人々に現金を支援しています。64カ国で、毎年合計21億ドル(約2300億円)を支援しています。そのお金で人々は商品を購入することでローカルな市場の発展につながります。

 2つ目はスーパーマーケットの機能です。コロナ以降もローカルなサプライチェーンを通じて50万tの食料を調達しました。60カ国の6000万人以上の子供たちに栄養価の高い食料を届けました。

 3つ目はホテルの機能です。空港が閉鎖され、航空機も飛ばない中でも約2万人の職員は人道支援を続けています。その多くは現場での活動です。我々は新しい方法を考える必要に迫られました。オンラインでホテルの部屋を確保し、マスクや個人防護服を確保して人道支援を続けました。ドローンや人工知能(AI)を活用し、リモート操作で食料を届けることも考えました。こうした状況下で必要なのが、テクノロジーです。

どのようなテクノロジーを活用していますか。

ポルカリ 使えるテクノロジーは何でも活用します。ITからターボチャージャーのエンジンまで。

 例えば災害が起きた際、現地に足を運べない時があります。ドローンによる空からの状況把握が力を発揮します。ドローンで情報を集めてマッピングし、AIで状況を比較します。「この橋がなくなっているが、どんな輸送手段で支援を届けるか」と考えます。ドローンは緊急対応のための“ゲームチェンジャー”です。モザンビークでは約3年前からドローンを活用しています。

 ただし、気をつけなければならないこともあります。災害時には様々な団体が支援にやってきます。多くのドローンが飛べば衝突のリスクがありますし、紛争地域ではドローンは軍用だと疑われてあまり信用されません。ドローン画像のデータ保護にも注意を払う必要があります。

 しかし、責任を持って扱えば、洪水のマッピング、建物やインフラの評価、作物や家畜のモニタリングにドローンは有用です。現地の人々にドローンになじんでもらうよう、トレーニングも行っています。