*このインタビューは2019年11月に行った

保険・再保険会社として経済のサステナビリティを支えるリスク管理に注力している。投資ポートフォリオで2050年のCO2実質ゼロを目指し、独自の方針を採用している。

――ワイマンさんはスイス・リーでサステナビリティや「表面化しつつある(emerging)リスク」などのマネジメント部門を率いています。どのようなリスクに注目していますか。

マーティン・ワイマン 氏
スイス・リー ヘッド・サステナビリティ、エマージング & 政治リスクマネジメント
スイス・リーでビジネスと環境、社会、ガバナンス関連要件の融合を指揮し、顧客や株主、政府、NGOや消費者を含む幅広いステークホルダーとの対話を担当している。金融安定理事会の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のメンバーや、国連環境計画(UNEP)金融イニシアティブ「持続可能な保険原則(PSI)」の理事を務める(写真:鈴木 愛子)

マーティン・ワイマン 氏(以下、敬称略) スイス・リーは独自の知見と資本を生かし、これからの世界を築いたり管理したりするのに役立つソリューションとして保険商品を提供し、世界をよりレジリエント(強靭)にしたいと考えています。実現には保険業界や金融業界の将来を見通し、リスクについて先見性のある視点を備えることが必要です。

 新しく表面化しているリスクの例として、最新のデジタル技術が既存のインフラに及ぼすリスクが挙げられます。保険会社として物的損害や事業中断などといった様々なリスクの可能性に注目しています。

 また、次世代通信規格「5G」技術の普及が及ぼす情報のプライバシーやセキュリティ侵害の可能性なども挙げられます。財政や金融に関わる政策の変化は、リスクや機会をもたらす可能性があります。そして気候変動は熱波や洪水、干ばつ、火災、媒介動物による病気など人々の生命と医療サービスが危険にさらされる可能性があります。対策を講じなければ死亡率と医療費が高騰し、健康や労災、生命保険事業に重大な結果をもたらす可能性があります。

 サステナビリティの追求は様々なリスクに対処するために重要な役割を担います。長期にわたって経済や社会、そして環境面で価値を生み出すためにサステナビリティは重要です。我が社はサステナビリティの確保のため、顧客や投資家、従業員、政府や規制当局と協力しています。

 また、顧客企業には様々なリスクがある一方、機会も多くあります。今後はリスクに加え、機会に関わる知見の獲得をより加速する必要があると考えています。

――ソリューションとは、具体的にどのようなことですか。

ワイマン リスク移転のための商品、つまり予想外の危機や自然災害に見舞われた企業や経済が回復するのを助ける保険商品の提供です。

 例えば日本がさらに強い社会になるように、仮に自然災害に見舞われるような場合も素早い再建を手助けする商品が挙げられます。気候変動に限らず、例えば伝染病や疾病などといったパンデミック、人口減など人口動態変化も対象となるでしょう。

 我々はこれらの表面化しつつある新しいリスクを特定し、世界が対応できるように手助けしていきます。

 具体的に3つのゴールがあります。1つ目は将来、新しいリスクになりそうだと考えられることについて社会の認識を高めること。2つ目は我が社と顧客のバランスシートを守ること。たとえ景気後退局面であってもです。そして3つ目が、リスクに対処するソリューション、新しい保険商品を作ることです。対処が必要なリスクはいくつも想定されますが、その1つが気候変動です。

 スイス・リーは気候変動による気象変化で資産が損壊するなどの物理的リスクを担保するだけでなく、低炭素社会への変化(移行)も手助けします。例えば自動車が化石燃料を燃焼して走るエンジン車から電気自動車に切り替わるような変化です。

 対処を要するリスクのもう1つの例として、政治リスクも挙げられます。具体的には戦争やテロ、ストライキ、暴動、社会的騒乱などがあります。大きな政治リスクのシナリオはある程度認識できます。政治リスクが将来、どのようなビジネスにどのような影響を与えるか、シナリオを基に、ポートフォリオを管理する戦略をつくることが重要です。