化粧品大手の仏ロレアルはCDPの気候変動、水、森林で4年連続Aを獲得した。日本でも1.5℃目標や、女性の役員を50%以上にする野心的な目標に取り組む。

2020年6月にロレアルグループは2030年に向けたサステナビリティ目標を発表しました。なぜ今でしょうか。

ジェローム・ブリュア
日本ロレアル 代表取締役社長
1991年にロレアルのパリ本社で香水ブランドのプロダクトマネージャーに就任。99年にメイベリン ニューヨーク米国本部のインターナショナルマーケティングマネージャーに。2008~10年に日本ロレアルのコンシューマープロダクツ事業本部副社長 兼 事業本部長。10~13年にロレアルドイツ社長。13~15年にメイベリン ニューヨーク国際事業本部(米国)のグローバルブランドプレジデント。15年7月から現職

ジェローム・ブリュア 氏(以下、敬称略) ロレアルグループは13年に、初めてサステナビリティに主眼を置いたコミットメント「Sharing Beauty with All〜美のすべてを、共に次世代へ〜」を発表し、取り組みを進めてきました。20年が最終年で、次の章に進む必要がありました。2つ目の理由は、地球環境が危機に瀕し、サステナビリティが待ったなしだからです。科学者はこの10年が要と言っています。気温上昇を1.5℃以内に収めないと地球の限界にきています。ロレアルの温室効果ガス削減目標は「1.5℃目標」に準拠するとSBT(科学に基づく温室効果ガス削減目標)認定されていますが、達成するにはすぐ動かなければなりません。

 3つ目の理由が新型コロナウイルスの影響です。新型コロナは人の健康上の危機ですが、様々なことが連鎖し、地球環境ともつながっています。長期的視点で取り組む必要があります。新しい時代に突入するタイミングだと思っています。

新型コロナが地球環境とつながっているとは、どういうことですか。

ブリュア 2つの側面があります。科学者は生物多様性が著しく損なわれ、それが新しい病気や疾病につながることが疑われていると言っています。人類の将来を見据えると生物多様性の保全が大事です。もう1つは社会的な面ですが、新型コロナは貧困など特に脆弱なコミュニティに強い影響を与えています。影響を受けるコミュニティに対しても解決策を提示したいと考えています。

戦略、KPI、透明性が重要

日本ロレアルもサステナビリティ目標を発表しました。

ブリュア グローバルと歩調を合わせましたが、日本ならではのトピックも2つあります。1つは気候変動への対応、もう1つは脆弱なコミュニティへの対応です。

 気候変動への対応では今後3年かけて3つのことを実施します。21年6月末までに新規什器をすべてエコデザインに変えます。22年末までには生産・流通の全拠点でCO2排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を達成します。そして23年末までに、製品開発の際に当社独自の環境影響評価ツールを活用し、環境負荷が製品カテゴリーの平均以上になるようにします。

 社会的な活動としては、女性管理職を増やします。20年6月時点で53%ですが、今後は部長職以上で50%以上、役員クラスで50%にします。シングルマザーの就労も支援していきます。

■ ロレアルグループのサステナビリティ目標
 
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■ 日本ロレアルのサステナビリティ目標
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22年末までに日本の全拠点をカーボンニュートラルにするということですが、どのように達成しますか。

ブリュア 16年にグリーン電力の購入を開始しました。東北の発電所の再生可能エネルギーを購入し、全拠点で再エネ100%を達成しました。静岡県御殿場市にある当社の現地法人コスメロール工場の蒸気ボイラーを電気加熱のものに切り替えれば、カーボンニュートラルを達成できるところまできました。

グローバルでは19年、環境評価で世界的な影響を持つCDPの気候変動、水セキュリティ、フォレストのいずれでも「A」を獲得しました。「トリプルA」の達成は16年から4年連続です。開示や取り組みのポイントは何ですか。投資家に戦略や姿勢を有効に伝えるコツはありますか。

ブリュア 私たちも結果を誇りに思っています。鍵となるポイントは3つあると考えています。1つ目は意思決定や戦略にサステナビリティが根付いていること。当社はサステナビリティを経営の中核に据え、意思決定でも重要な要素と考えています。2つ目はKPI(重要業績評価指標)を定めて測定している点。当社は気候変動も水セキュリティもフォレストも、数値化された目標値を定めています。3つ目は透明性です。経営やビジネス上の意思決定、KPIによる数字の開示に真摯に対応することが重要と考えています。

 ロレアルグループが投資家から評価されているのは、相反すると思われる事業性・収益性とCO2削減の両立を実証できていることだと考えます。05年以降、生産量を37%伸ばしながらCO2を78%削減しました。エンジニアが知恵を出し合い、技術的な見直をして達成しました。

 気候変動では省エネルギーや輸送時のCO2削減、液体を作る際の加熱の削減を行いました。水セキュリティでは、水の使用量や洗う頻度を減らしながら品質を維持するよう洗浄効率を上げました。フォレストではサプライヤーとの契約を厳しく管理しています。森林伐採に関わっていないか、伐採した場合に同程度を植林し、実質的に森林破壊ゼロを実現しているかを確認しています。