山口 かつてトヨタ自動車は1997年にハイブリッド車(HV)のプリウスを世界に先駆けて発売しましたが、非常に先見の明があったと思います。今でもプリウスは環境プロダクトの代名詞のように語られることが多いですから。トヨタの次世代車戦略は、プラグインハイブリッド車(PHV)、EV、燃料電池車の3方向で開発を進めている。一方で、「全ての人にFUN TO DRIVEを」をメッセージとして掲げ、イギリスのモータースポーツの祭典「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」にも毎年参加するなど、車の楽しさをアピールしています。便利な道具としての車づくりと、車という遊び文化の創造の両方を目指すトヨタ流のサステナブル経営でしょう。

ビジネスの原罪性が問われる

世界的にESG投資の波がますます高くなっており、日本企業もサプライチェーンの末端まで目配りしなくてはなりません。

山口 国連がSDGs(持続可能な開発目標)を定めたことで、企業の倫理的側面を見る目が非常に厳しくなっています。

 2年前になりますが、イギリスのファッションブランド「バーバリー」が、1年間で40億円分の売れ残り商品を焼却処分していたとして、メディアから強く非難され、不買運動まで起こりました。過去何年にもわたって同じように処分していたにもかかわらず、突然告発されたのです。もともとアパレルは繊維を染めるときに大量の水を使うため環境団体からターゲットにされやすい業界ではあるのですが、バーバリーにしてみればなぜこのタイミングなのか、と思ったかもしれません。

 ビジネスとは、原料を安く仕入れて、加工して、高く売るという営みです。どれくらいの利益をのせれば適正なのか、搾取なのか、無限のグラデーションがある。ビジネスという仕組みそのものが原罪性を内包しており、そこを非常に厳しく見られる時代になってきたと言えるでしょう。企業は自らの事業のどこに倫理的な問題が生じるリスクがありそうかを意識し、それを最小化する努力が求められていると思います。

 日本企業に今、必要なのは「問題を発見する力」です。問題を発見し、組織や事業の新陳代謝を進めていかなければ世界のスピードに追い付くことはできません。その主役となるのは20代、30代の人たちで、経営者はサーバント、支援者という意識を持つことです。特に大企業の場合、新卒一括採用や年功序列の給与体系など、旧態依然の人事システムを改めないと、モチベーションの高い、積極的な人材を集めることはできません。「この会社で自分は何ができるのか」というやりがいが見える組織づくりを始めてほしいと思います。

最後に、サステナブル経営を目指す企業に向けた力強いメッセージをいただきました。長時間お付き合いいただき、ありがとうございました。

(写真:長坂邦宏)