食への関心の高まりの背景にはEU戦略もありますか。EUは「欧州グリーンディール」の柱として、食のサプライチェーンを持続可能にする「農場から食卓まで(Farm to Fork)」戦略を20年5月に策定しました。この戦略は企業や金融機関にどんな変化をもたらしていますか。

ヴァン・デル・ワーフ ロベコは規制や新しい枠組みができるたび入念にリサーチし、投資先企業を訪ね、「新しい枠組みは御社にとって価値になるか障壁になるか、日々の事業をどうするつもりか」と質問し、投資判断に使ってきました。多くの企業はまだEU戦略がどうなるか見守っている段階でしょうか。特に農業関連企業は助成金や融資に影響があるので注視しています。

 CO2のさらなる削減や、代替タンパクや新しい食文化の創出の必要性を感じて既に動き出した企業もあります。ロベコはFarm to Fork戦略のトレンドをきっちりつかめる企業に投資していく予定です。

昆虫が未来の食の鍵に

最近、持続可能な食の1つとして、肉を大豆などの植物で置き換えた「代替肉」が注目を集めています。しかし、肉を植物で代替すればCO2は削減できますが、生産地拡大が森林破壊を引き起こします。気候変動と生物多様性のバランスのとり方が難しい。食料システムのあるべき「変革」はどのようなものだと考えますか。

マーティン・ビアマンス氏
ラボバンク サステナブル・キャピタル・マーケット責任者
オランダのアムステルダム大学で経済学と哲学の修士号、経済学の博士号を取得。オルタナティブの責任投資を専門とする戦略コンサルタントを務めた後、2017年にESGの責任者としてラボバンクに入行。持続可能な資本市場チームを率いる。UNEP(国連環境計画) 金融イニシアティブの社会問題諮問委員会メンバー、国連グローバル・コンパクトのオランダ・ネットワーク理事会メンバーでもある

ビアマンス 私はずばり昆虫が鍵を握ると考えています。既に水産業では昆虫を魚の餌に使うことが盛んに行われています。食のサプライチェーンを変革するのに昆虫が大きな役割を担うと思います。

ヴァン・デル・ワーフ 私は食料システムに生物多様性をきっちり組み込まなければならないと考えています。SDGsの目標14は「海の豊かさ」ですが、人類はあまりにも魚を乱獲してきた歴史があります。鍵となるのは養殖です。しかし、サーモンの養殖は小魚を餌として与えて天然資源を消費しており、持続可能ではありません。今後、昆虫をはじめさらなる研究開発が必要でしょう。

 食生活の変革も必要です。19年にFAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)は「持続可能で健康な食生活」原則を発表しました。健康でサステナブルな食生活を実現できれば、肉の消費量を減らせます。野菜や果物を取るアジアの食生活に見習うべきところがあります。

 健康な食生活を実現できれば、SDGsの目標14「海の豊かさ」と目標15「陸の豊かさ」を解決できる部分があります。食品会社には、人々がそうした食生活を送れるよう取り組んでもらいたいと伝えています。

食品関連企業と対話する際には、代替肉の生産や昆虫の活用なども踏み込んで聞いているのでしょうか。

ビアマンス 「御社の戦略はどのようなものか、5~10年後にどんな目標を実現したいか」など、もっと大枠を質問していますね。戦略を答えられない企業は融資の価値があるのか考えなければなりません。

ヴァン・デル・ワーフ ロベコは食肉加工業界にアプローチしています。代替肉の開発スピードは速く、新規上場した企業も出てきました。まさにイノベーションの花盛り。代替肉を生産するベンチャーキャピタルを買収し、自社内に取り込んだ食肉加工会社もあります。そうすることで自社製品のCO2を削減できる上、リスクも分散できます。

 新型コロナウイルスの蔓延によって製造ラインをストップせざるを得ない大手食肉加工業者もありましたが、代替肉を生産している企業ならそちらにシフトもできます。何が起きても俊敏に強く対応できるのはレジリエンスであり、投資判断する際の重要な要素になります。