トレーサビリティ情報が欲しい

企業が自然関連情報を開示する枠組みを作るTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が近く正式に発足する予定です。企業の自然に関するどのような情報が欲しいですか。

ロベコ ピーター・ヴァン・デル・ワーフ氏

ヴァン・デル・ワーフ トレーサビリティの情報を開示してもらいたいです。陸でも海でも、生産された食べ物がどこで調達されたかを知りたい。原産国、原産地。それが分かれば生物多様性にどんなインパクトを与えているかが分かります。

 ロベコは20年9月の国連総会で発足した「金融による生物多様性誓約」に署名しました。生物多様性の目標を資産運用に盛り込み、企業の生物多様性へのインパクトを評価して投融資に反映するという誓約で、24年までに実施することを宣言しました。そのためにはトレーサビリティの情報が必要です。

 TNFDは企業のレポーティング基準を明確に示すものだと捉えています。枠組みに沿って企業が生物多様性やトレーサビリティの情報を開示すれば、投資判断に使えます。

ビアマンス 私も同じです。どんな形でどこでどれくらい自然に依存しているのか、つまりトレーサビリティ情報を開示していただきたい。そうすれば与信に使えます。

企業の情報開示について、どこまで開示したらよいのかという声をよく聞きます。世の中には多くのESGのインデックスやベンチマークがありますが、企業はそれらすべてに対応しなければなりませんか。

ヴァン・デル・ワーフ ご存じの通り、ロベコグループはダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)も作っています。企業にアンケートを送り、回答を評価するものです。DJSIの評価項目は600と広範囲で、例えばコーポレート・ガバナンスを評価するだけならこれで十分でしょう。

 一方、ロベコはSDGsへの貢献を測る世界標準のベンチマークを作る「ワールド・ベンチマーキング・アライアンス(WBA)」にも加盟し、そのインデックスも活用しています。例えば食品関係では「シーフード・スチュワードシップ・インデックス(SSI)」や「食料と農業ベンチマーク」があります。水産業なら、細かい評価基準を設けているSSIを使うと深掘りして評価できます。

 1つのインデックスで全業界を横並びに比較できるものはなく、インデックスごとに強みも弱みもあります。ですので、様々なインデックスを組み合わせ、補完して使っているのが現状です。

ラボバンク マーティン・ビアマンス氏

 評価したい業界に最適なベンチマークを選び、自社のリサーチと組み合わせて評価し、結果を投資先企業にも提示しています。「このインデックスで使われているメソドロジーは当社のビジネスと合致していない」と文句を言う企業もありますが、企業と議論する出発点になります。「今年はこういうスコアだったが、来年はもっと良くしましょう」というようにね。

ビアマンス ラボバンクも様々なリサーチやインデックスを組み合わせて企業の全体像を見ています。WBAのベンチマークは非上場企業も評価している点が使い勝手がよいです。情報を全く開示しないプライベートカンパニーもありますから。食料・農業のサプライチェーン全体を見るのに役立っています。

日本の食品企業が改善すべき点は何ですか、逆に強みは何でしょうか。

ヴァン・デル・ワーフ 改善すべき1点目は情報開示です。欧州、米国、東南アジアの企業はサステナビリティのアンケートを送ると細かなデータを開示します。しかし日本企業は、たとえ取り組みをしていても情報開示をせず、格付けが低くなります。特に非上場企業は最低限の情報開示さえしない場合があります。

 2つ目は、どんな指標で追跡しているか明確にすべきです。適切な指標を使い、これはできている、これはできていない、来年これをできるようにしようと追跡していただきたい。日本企業は本来こうしたプロセスが得意なはずですが、経営層がサステナビリティのチームに「やりなさい」と指導して初めてできるようです。経営層が音頭を取って積極的に進めてほしいですね。