積水ハウスは、庭の緑化活動「5本の樹」が生物多様性に及ぼす効果を算出した。ビッグデータを用いて科学的に計算し、自然の情報開示TNFDにも備える。

 積水ハウスは、住宅の庭で20年間展開してきた緑化活動「5本の樹」が在来種の樹種を10倍に増やし、鳥やチョウを呼び込む効果があったことをビッグデータを用いて科学的に算出したと発表した。5本の樹は、「3本は鳥のため、2本はチョウのため」顧客の庭に地域の在来樹種を植える活動で、2001年に始めた。生物多様性の分野で国際的に要請が高まっている自然を増やす活動「ネイチャー・ポジティブ」への貢献を日本企業で初めて定量的に打ち出した。

■ 「5本の樹」で在来樹種が10倍に拡大
■ 「5本の樹」で在来樹種が10倍に拡大
出所:積水ハウスのデータを基に日経ESG編集

 従来、企業が進めてきた緑化活動は野外調査で動植物の増加を確認し効果を見極めていた。だが、調査結果は季節や天気に左右されるため、効果を客観的に評価できなかった。

 そこで積水ハウスは、全国の動植物データと衛星の位置情報データを組み合わせたビッグデータを構築している琉球大学の久保田康裕教授と共同。5本の樹を実施した家の位置情報や樹木のデータを分析し、植栽に伴う生物多様性向上効果を定量的に弾き出した。鳥の種は2倍に、チョウは5倍に増えたと結論づけた。

 同社は他の住宅メーカーにも5本の樹を進めてもらい、さらに効果を上げたい考えだ。3大都市圏(関東、近畿、中京)で新築物件の3割が5本の樹を採用すれば、生物多様性の豊かさを示す「多様度統合指数」を大幅に伸ばせると予測した(下の図)。

■ 3大都市圏で生物多様性への効果を計算
■ 3大都市圏で生物多様性への効果を計算
出所:積水ハウスのデータを基に日経ESG編集

 生物多様性の数値化は今後の国際交渉や企業の情報開示で鍵になる。22年5月の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択予定の新しい世界目標には「陸と海の30%保全」が盛り込まれ、そこには「民間と連携した自然環境保全(OECM)」地域も含まれる予定だ。5本の樹による緑化がOECM地域に認められれば、新目標への貢献を打ち出せる。また、投資家に向けて自然への依存度や影響を開示する「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」の枠組みでも定量化は前提になる。

 ネイチャー・ポジティブやTNFD開示に向けた生物多様性の定量化の取り組みは今後活発化するだろう。