企業年金も責任投資を

日本の投資家に働きかけることは。

木村 PRIの4000を超える署名機関のうち、21年4月時点で米国が700機関を超え最も多く、前年比27%で増えた。次いで英国・アイルランドが600機関を超え同30%増。日本の参加機関は100弱で同10%増だ。一方、中国は57機関だが同約50%増のペースで存在感が増しつつある。資産運用残高ベースで日本と中国の逆転もあり得るだろう。

 東京都が国際金融都市構想を示している中、国内の「同士」のさらなる参加を期待している。

■ インパクト投資(コミュニティ投資を含む)の規模
■ インパクト投資(コミュニティ投資を含む)の規模
棒グラフ上に世界全体のインパクト投資(コミュニティ投資を含む)の規模を示し、20年のみ地域別の内訳を示した
(出所:世界持続的投資連合(GSIA)「GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW 2020」)

どういった機関に期待するか。

木村 例えば企業年金基金が挙げられる。日本の企業年金の母体企業の多くは、SDGsにしっかりと取り組んでいる。だが、PRIに署名した企業年金は3機関にとどまる。

 母体企業が、企業年金によるESGインテグレーションを支援することを期待している。母体企業の経営にもメリットがある。実現すれば、母体企業は傘下の年金基金を通じてSDGsへの貢献に資金を回し、地域・社会に貢献しているとアピールできる。企業のブランドイメージが向上し、従業員の定着率も高まるだろう。

 そうなれば年金基金のポートフォリオも改善し、最終的に受益者にもメリットがあり、地域社会にも従業員にも一石二鳥の面がある。

 PRIに署名するメリットも多い。責任投資を実践する世界の優良な事例に接することができる。例えば責任投資は、最終受益者の価値観や好み、そして「サステナビリティプレファレンス」と呼ぶ持続可能性に関わる選好性を反映して運用することが重要だ。日本では進んでいないが、海外事例に学ぶことは多い。

 英通信大手BTグループの企業年金は、加入者や受給者にESG投資を希望するかを尋ねる調査を実施した。これに76%が希望すると回答。また、ポジティブなインパクトの創出を期待するかを尋ねると、67%が期待すると回答した。金銭リターンを犠牲にしない範囲でインパクトを重視してほしいという受益者の意向をくみ取り、投資方針を組み、資産運用会社に投資方針を示すというプロセスを踏んでいる。

 PRIは発足当初より、インベストメントチェーンの上流に当たる受益者から、下流に当たる資産運用会社に意思が伝わる仕組みを重視している。資産運用会社のアセットマネジャーはESG投資の受け皿をつくるが、受け皿つまり仏に魂を入れられるかは、受益者の価値観を把握しているアセットオーナーの役割。日本でも十分に考慮されていくべきだ。