廃プラスチックのリサイクル目標を達成すると利率を優遇する。融資の条件設定から返済まで、借り手と貸し手の「対話」を重視する。

 日本政策投資銀行(DBJ)は2020年12月2日、三菱ケミカルホールディングスと300億円のサステナビリティ・リンク・ローン契約を締結した。契約期間は10年である。

 サステナビリティ・リンク・ローンは、国際資本市場協会(ICMA)が原則を定めるESG関連ローンで、ESGに関する目標を設定し、達成状況に応じて利率が変わるのが特徴だ。欧州などで広がりを見せており、国内でも日本郵船、リコー、三菱地所などが利用を始めている。

 今回、三菱ケミカルHDが設定したESG目標は、廃プラスチックのリサイクル量だ。「資金使途はケミカルリサイクルなどのサーキュラーエコノミーに関する投資に使用する」(広報・IR室)。同社は、19年11にJXTGエネルギーと石油化学事業の連携を強化する有限責任事業組合を設立し、ケミカルリサイクル技術の実用化に取り組んでいる。ローンの活用で、こうした取り組みを加速させたい考えだ。目標達成時の利率優遇幅は0.1%未満とした。

サステナビリティ・リンク・ローンの融資額は300億円。廃プラスチックのリサイクルに関する目標を達成すると、利率が引き下げられる。写真は、三菱ケミカルの茨城事業所
(写真:三菱ケミカルホールディングス)

助言ノウハウを強みに

 今回の融資には、これまでになかった特徴がある。DBJのサステナビリティ企画部調査役の福吉隆行氏は、「対話を重視したESGローンを実現した」と話す。

 サステナビリティ・リンク・ローンを実行するには、設定目標や発行条件がICMAが定める原則に沿っているかどうかを検証する必要がある。これまでは、外部評価機関が検証する「外部レビュー」と呼ばれる方法が採用されていたが、今回は借り手が自己検証する「内部レビュー」を国内で初めて採用した。検証するのは三菱ケミカルHDで、DBJは対話から意欲的な目標を引き出し、目標達成の実現性を高める役割を担った。

 また、サステナビリティ・リンク・ローンでは、1年に1回以上の進捗報告が求められる。報告の方法は企業に任されているが、今回は貸し手と借り手の対話も条件とした。対話を通して目標達成まで伴走する。

 DBJは、企業の環境の取り組みを審査し、その評価によって融資条件を決める「環境格付融資」で実績がある。審査で得た環境分野などの専門知識を生かして、対話を付加価値として提供し、他行との差別化を図りたい考えだ。

 株式による直接金融では、機関投資家と企業のエンゲージメント(対話)が企業のESGを向上させている。コロナ禍において資金供給の需要は高まっており、銀行の役割は大きい。銀行による間接金融でも、対話がESG推進の鍵となりつつある。