リコーは取締役の賞与額を外部のESG評価と連動させる。事業を通じた社会課題の解決に全社で取り組む推進力にする。

 リコーは取締役の賞与額を、ESG活動の進捗と連動させる。これまでは役位や連結営業利益を基に金額が決まっていた。2020年度以降は、ROE(自己資本利益率)目標の達成度や、外部のESG評価を算定に使う。

 新たにROEを22年度に9%以上にする目標を掲げた。賞与額の算定では、その年度におけるROE実績値の目標達成率で決まる係数を使う。

 代表的なESG投資指標である「ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)」による評価で決まる係数も採用した。同じ指標でも上位の「ワールド」の構成銘柄に選定されたか、「アジア・パシフィック」のみかによっても係数が変わる。20年には、「DJSIワールド」に組み入れられた。

■ リコーは重要指標と賞与を連動させた
■ リコーは重要指標と賞与を連動させた
リコーは取締役・執行役員の賞与をROEやESG評価と連動させる。「DJSI」はダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックスのこと
(出所:リコー)

コロナ後の変革へ、目標を刷新

 DJSIで高評価を得るリコーが、ESG活動の推進力と位置づけるのが、20年に刷新したESG目標だ。

 DJSIのほかCDPなどのESG評価機関の質問や、顧客や取引先、従業員、株主などのステークホルダーの要請を踏まえ、事業を通じて実践する14の目標を策定した。温室効果ガス排出量の削減や製品の省資源化率、女性管理職比率などの目標だ。リコーが特定している7つのマテリアリティ(重要課題)の解決に貢献する内容である。これを詳細にブレークダウンした目標を、事業部門や間接部門に設定した。

 執行役員の賞与や、目標を設定した部門長の報酬にもESG評価を連動させた。全社でESG目標を確実に達成しようとする動機付けとなる。

 目標を定めた理由について「社会が変化する今、持続可能な企業がステークホルダーの役に立つことができ、企業の責任を果たせる」と、執行役員を務めるサステナビリティ推進本部の鈴木美佳子本部長は説明する。

 20年、新型コロナウイルス感染症の拡大で事業環境が様変わりした。主力の事務機製造販売事業は、企業の在宅勤務導入により20年4~9月は前年同期比で約25%減収だった。

 リコーは足元の利益を確保しながら将来の成長を確実にするため、20年度から危機対応と、機器メーカーからデジタルサービス企業への脱皮を図る変革を加速。同時に山下良則社長が特にこだわるのが、「社会課題解決による持続的な企業価値の向上」だ。企業価値向上を追求するために掲げたのが、ROE目標とESG目標である。

 将来の競争力を高めるため、ESG経営の継続は欠かせない。逆風の時こそ、経営者の本気が問われる。