コロナ不況によって世界中で移住労働者を取り巻く環境が急速に悪化している。ANAは、グローバルに取引先と情報共有することで、課題の早期発見に努めている。

 新型コロナウイルス感染症の影響によって世界で移住労働者の生活環境が急速に悪化している。国内に住む250万人の移民も例外ではない。

 移住労働者は社会的、経済的基盤が弱く、コロナ不況によって仕事を失うケースが後を絶たない。一方で安い労働力の需要は高く、借金による拘束での強制労働や、犯罪を強制するなどの搾取が行われている。

 実際に国内ではどのような搾取が行われているのか。警察庁によれば、過去10年間で355人が人身取引の被害に遭っている(下のグラフ)。国籍は日本が167人と約半数を占め、次いでフィリピンの116人、タイの53人と続く。ただし、これは警察庁が把握している数字であり氷山の一角にすぎない。

■ 日本における国籍別の人身取引被害者数(2010~19年)
日本国内で過去10年間で355人が人身取引の被害に遭っており、日本人が約半数を占める
(出所:警察庁)

 人身取引の多くは、売春や強制労働である。最近は大手企業でも、取引先企業が外国人に対して強制労働や人権侵害を行っているとして告発されるケースが増えている。

現場の「異変」を見逃さない

 全日本空輸(ANA)は、「外国人労働者の労働環境の把握」とその改善を人権テーマのトップに据え、取り組みを進化させている。2020年12月に公表した「人権報告書2020」でもそこにスポットを当てた。

 同社では17年から毎年、地上業務を委託するパートナー企業などで働く外国人労働者へのインタビューを実施し、労働時間や賃金、健康、コミュニケーションなどについてヒアリングを行っている。

 19年はネパールやモンゴルなどの国籍を持つ社員など10人にヒアリングし、その意見を基に早朝や深夜勤務の際に仮眠や休憩を取るための広く快適なスペースを設置した。

 20年には「グローバルサプライチェーン労働者情報集約システム」を稼働させた。「グループ内だけでなくパートナー企業との間で外国人労働者の雇用状況や注意点を共有することによって、現場での課題を早期に発見し、対応することが狙い」と、ANAホールディングス サステナビリティ推進部の菊池俊介マネジャーは話す。今後、外国人を雇用する際の注意点が順守されているかをチェックする仕組みも整備する。

 「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した新たな苦情処理メカニズムの運用も開始した。従来よりもアクセシビリティや透明性を高めているのが特徴だ。

 少子高齢化が加速する日本において外国人労働者の雇用は今後も増えていくと考えられる。ANAの取り組みに学ぶべきところは多い。