資金使途を限定しない使い勝手の良さが、発行体の裾野を広げる。ESG戦略と成長への意欲を伝える手段として、投資家が熱い視線を注ぐ。

 2021年、世界のサステナビリティ・リンク・ボンド(以下、SLB)発行額は大きく伸びた。英国Environmental Finance社によれば、21年11月16日時点での発行額は20年の9倍を超える816億ドル、発行体の数も7.4倍の118社を数える。

 SLBは資金使途が自由で企業にとって使い勝手がよい。調達資金が企業の持続的成長と社会にどんなインパクトをもたらすかを目標(サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット、以下SPT)として設定し、投資家に意欲をアピールする。

 野村資本市場研究所 野村サステナビリティ研究センターの江夏あかねセンター長は、SLB市場が拡大している背景を次のように分析する。 「近年、投資家が発行体企業のサステナビリティ対応の全体像に着目する動きがみられる。特定のプロジェクトを資金使途にするグリーンボンドなどに比べて、SLBは投資家と発行体企業とのエンゲージメントにおいて、サステナビリティ戦略について深い議論を交わすツールになりやすい。そのことも投資家の関心を高めているのではないか」

■ 2021年に国内で発行された主なサステナビリティ・リンク・ボンド
■ 2021年に国内で発行された主なサステナビリティ・リンク・ボンド
SPT:サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット
(出所:各社の発表資料を基に日経ESG編集部作成。債券発行日の新しい順に掲載)
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成長投資の資金を調達

 SLBで調達した資金を成長分野へ投資することを念頭に大型起債に取り組んだのがTDKだ。

 21年12月、TDKは総額1000億円(5年、7年、10年の3件)の社債を発行。そのうち400億円を年限7年のSLBとして発行した。同社は20年末にも総額と年限が同じ普通債を3件発行している。5年債と10年債に比べ、7年債は需要がやや低くなる。そこで翌年は7年債に特徴を持たせるべく、ESG債の検討を開始した。

 同社の経理・財務本部財務部の矢野間輝満部長は、「グリーンボンドも検討したが、資金使途を特定した個別のプロジェクトを社内で積み上げる必要があり、大型の資金調達の手法としては適さない面があった。その点SLBは資金使途を特定せず、成長分野に投資できるため、起債に取り組むことにした」と経緯について話す。

■ TDKは再エネや成長事業に投資
中国福建省寧徳市にあるTDKのグループ会社ATLの寧徳工場。工場の屋根に最大出力1万5000kWの太陽光発電パネルを設置して再エネ利用に努めている<br><span class="fontSizeS">(写真:TDK)</span>
中国福建省寧徳市にあるTDKのグループ会社ATLの寧徳工場。工場の屋根に最大出力1万5000kWの太陽光発電パネルを設置して再エネ利用に努めている
(写真:TDK)
中国の寧徳工場で製造するリチウムイオン電池
中国の寧徳工場で製造するリチウムイオン電池