気候変動政策の意思決定に影響を与えるIPCC報告書が順次公表される。気候リスク管理にとどまらず、社会が掲げる目標との連携を目指す。

 2021年に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、第6次評価報告書(AR6)を3回に分けて公表する(表)。4月に『自然科学的根拠』、9月に『気候変動の緩和』、10月に 『気候変動の影響・適応・脆弱性』、さらに22年4月には AR6統合報告書が公表される。

■IPCC第6次評価報告書公表までのスケジュール
AR5:気候変動に関する政府間パネル第5 次評価報告書  WG1 ~ 3:第1 ~第3 作業部会
AR6:気候変動に関する政府間パネル第6 次評価報告書

 IPCC報告書は、気候変動政策の意思決定に広く活用されてきたが、「その役割や位置づけは時代とともに変化している。特にAR6に関しては、15年の国連によるSDGs(持続可能な開発目標)の採択、パリ協定の合意が大きく影響した」と、茨城大学の三村信男特命教授は話す。同教授は、AR6第2作業部会(WG2、気候変動の影響・適応・脆弱性)において全体総括する最終章(18章)のRE(査読編集者)を務める。

 AR5では、適応策と緩和策によって気候リスクをどう管理するかという、リスクマネジメント戦略の意思決定に主眼が置かれていた。これに対し、「AR6では、SDGsの目標の中に気候変動対策をどう位置づけるかが大きなテーマになっている。貧困や飢餓への対策、社会格差の是正、都市の脆弱性克服といった幅広い観点から気候変動政策の妥当性を考えることが必要になってきた」(三村教授)。

レジリエントな社会をつくる

 実際にIPCCのWG2の議論に参加し、「風景が変わった」と三村教授は話す。

 従来は、自然科学や農学、工学、経済学といった分野の研究者が多かった。それがAR6では、社会学や倫理学など多様な学問分野、女性研究者の増加、途上国をはじめ国籍・人種の多様化が目立った。交わされる議論も、SDGsが掲げる望ましい社会形成と気候変動対策とをどうやって統合するかが焦点になった。

 WG2では、目指すべき社会のキーワードとして「Climate Resilient Development(気候に対する耐性の高い開発)」を提示。「その意図するところは、もはや政策担当者がつくる気候変動対策だけでは目標を達成できないということだ。レジリエントな社会をどうつくるか、企業や地域住民を巻き込んだ議論が必要になる」と三村教授は強調する。

 20年は、1.5℃目標の達成に向け、各国が「50年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの実質ゼロ)」を表明した。社会システムが大きな変革を迫られる中、AR6が発信するメッセージと最新情報を参照しながら、自社の気候変動政策を立案・実行することが求められる。