育成環境に配慮した農業で育った卵やバターを販売する。「全ての利害関係者に配慮し、長期成長を目指す」と宣言する。

 2020年7月、米テキサス州に本社を置くバイタル・ファームズが株式公開を果たした。11月には新規株式を売り出し、1億5000万ドル(約157億円)を調達した。時価総額は10億ドル(約1050億円)に達する。

 バイタル・ファームズの設立は2013年で、従業員約170人。全米200の農場と契約して、卵やバターを生産、小売りチェーンを通して販売する。自ら「良心的な資本主義」に立ち、全ての利害関係者に配慮する「ステークホルダー主義」を宣言。「長期成長を重視する」と株主に繰り返し訴えている。まさに「サステナブル銘柄」というわけだ。

 宣言に基づいて契約農場では、その生産管理の在り方を細かく規定。鶏1羽当たりの専有面積や農場全体の広さ、さらに牧草地で育てることなど「環境や従事者に優しい事業」を徹底して、信頼獲得に努める。

 すでに同社の卵やバターなどを扱う小売りチェーンは米ウォルマートや米ホールフーズなど1万6000に達し、その数は増え続けている。自社が発するメッセージが消費者や株主に受け入れられている状況だ。

ホールフーズの店舗で販売されているバイタル・ファームズの牧草で育てられた鶏の卵
(写真:Alamy/アフロ)

 同社のラッセル・ディズ-カンセコCEO(最高経営責任者)は「直近の3カ月の間に取扱店は600増えた。私たちの経営方針が評価されている」と胸を張る。

 実際に業績は伸びている。2020年1-9月期の売上高は1億6000万ドル(約168億円)、純利益は950万ドル(約10億円)と、前年同期比でそれぞれ60%、24%伸びている。

 躍進の要因は、リピーターの増加にある。同社の調査によれば、顧客数は112万人に達して、そのうち70%が製品を再度購入するリピーターになっている。新規顧客が増えても、その傾向は変わらないという。

成長性への評価高まる

 「サステナブル銘柄」を宣言して、経営姿勢に共鳴する消費者を増やしたとする同社だが、今のところ成長性への評価が高い。米運用会社のバロン・ディスカバリー・ファンドはバイタル・ファームズを銘柄に組み入れている理由を「予想を上回る売り上げの伸び」とした。

 米調査会社のシンプリー・ウォールストリートは「機関投資家の投資が増えそう」と見る。現在は発行済株式の40%を個人投資家が占めるが、「成長性や戦略を評価する機関投資家が増えている。保有比率が高まるだろう」としている。特にベンチャー企業だけに業績の改善に期待が集まっている状況だ。

 ディズ-カンセコCEOは「コロナの状況を受けて、通販にも力を入れている。大手小売りチェーンで扱われるようになり、顧客は大幅に伸びている」と語る。実際にアマゾン・ドット・コムやウォルマートでの通販での販売額は過去3カ月で約3倍に増えている。

 顧客数の伸びと評価の高まりと並行して契約農場や供給量をきちんと保っていけるか。まさに持続性が問われることになる。