21年夏公表予定の「第6次エネルギー基本計画」では電源構成が焦点になる。電力最大手の東京電力が示した予測は議論を呼びそうだ。
東京電力ホールディングスは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づくシナリオ分析の2020年版を20年12月に公表した。その中で、「1.5℃目標」の達成には、50年に再生可能エネルギーの比率を約6割に高め、石炭火力をほぼゼロにする必要があるとの予測を示した。
20年10月の政府による「50年CO2実質排出ゼロ(脱炭素)」宣言を受け、今夏に向けて取りまとめが進む「第6次エネルギー基本計画」においても電源構成は注目の的だ。それに先立ち電力最大手の同社が独自予測を示したインパクトは大きい。
「機関投資家をはじめとする金融のステークホルダーと対話を重ねる中で、開示要請の強いものを20年版に盛り込んだ。ただし遠い未来の電源構成までを要請する投資家はなく、その意味では期待を超えた開示になっていると思う」と、ESG推進室ESG調査グループマネージャーの富田優樹氏は話す。
その上で、50年の電源構成を示した理由について、「政策提言を意図したわけではなく、当社の目指す着地点でもない。当社の持続可能な事業戦略についてステークホルダーとの議論を深めるため、1つの方向性を示した」と富田氏は説明する。
石炭火力はゼロに近づく
同社は19年にTCFD情報開示を開始。1年目はグローバルにおける50年までのCO2排出量と電化率(最終エネルギー消費における電力使用量の割合)のシナリオ分析を実施した。2年目の20年版では、日本国内における50年までのCO2排出量、電化率、電力需要について、現状および2℃シナリオ、1.5℃シナリオについて分析した(下のグラフ)。



(出所:東京電力ホールディングス)
このうちの2℃および1.5℃シナリオを基に、50年の電源構成を予測したのが下の円グラフだ。
2℃シナリオでは再エネ比率47%、石炭火力11%だが、1.5℃シナリオになると再エネ比率は10ポイント上昇して57%になり、逆に石炭火力は9ポイント低下し2%になる。

(出所:東京電力ホールディングス)
「CCS(CO2回収・貯留)など革新的な脱炭素化技術のロードマップやエネルギーコストなどを調査し数字を積み上げていった。1.5℃を達成するためには、産業・運輸・民生などあらゆる分野において、石炭・石油・ガスなどの化石燃料の利用を極めて少なくする必要がある」と、富田氏は強調する。