全日本空輸は、航空燃料の脱炭素化を利用者と共に進める。TCFD情報開示に使えるCO₂削減証書を発行することで企業の参画を促す。

 全日本空輸(ANA)は、企業のCO₂排出削減を支援する「SAFフライトイニシアチブ コーポレート・プログラム」の受付を2022年1月20日に開始した。ANAが運航する航空便を出張などで利用した企業に対して、持続可能な航空燃料(SAF)によってCO₂削減に貢献したことを示す証書を付与する。この証書は、欧州連合(EU)の再生可能エネルギー指令に準拠しており、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)やCDPなどの情報開示に使用できる。

 ANAは、年間契約を結んだ企業の従業員が1年間に出張などで使った航空便の飛行距離を見積もり、SAF利用によるCO₂削減効果を算出、それに応じた証書を発行する。企業は航空運賃とは別にSAF導入コストの一部と証書発行にかかる費用などを利用料として支払う。企業が削減したいCO₂排出量や予算を提示して契約することもできる。

プライム上場企業に照準

 プログラムの主なターゲットは、22年4月に東京証券取引所に新設されるプライム市場の上場企業。21年に改訂されたコーポレートガバナンス・コードが同市場に上場する企業にTCFD情報開示を求めているからだ。特に原材料の製造や輸送、販売した製品の使用段階などで発生する温室効果ガスのバリューチェーン排出量(スコープ3)が排出量全体(スコープ1〜3)の40%以上を占める企業は、その算定・開示が必要となり大きな課題になっている。

 ANA企画室の乾元英航空政策/ESG担当は、「スコープ3の比重が高い商社などに利用メリットがあるとみている。製品輸送時のCO₂排出を削減するカーゴ・プログラムもあり、製薬企業や精密機器メーカーなどの需要を開拓していきたい」と話す。

 先行して運用を始めたカーゴ・プログラムには日本通運ほか2社が既に参画している。21年9月にはSAFを搭載した日本初の共同運航の貨物便が成田空港から独フランクフルト空港に向けて飛び立った。

2021年9月にSAFを搭載した日本初の航空貨物便が成田空港からフランクフルト空港まで運航<br><span class="fontSizeS">(写真:ANA)</span>
2021年9月にSAFを搭載した日本初の航空貨物便が成田空港からフランクフルト空港まで運航
(写真:ANA)

 国際航空の世界ではCO₂排出規制が強化され、航空会社の間でSAFの争奪戦が激化しつつある。ANAは、SAF導入プログラムを貨物輸送業界や企業向けに提供することでSAFの需要を安定的に確保し、SAFを供給する事業者に対する交渉力を高めたい考えだ。