世界中にサプライチェーンを持つイオンは、人権の苦情処理メカニズムを作った。国内小売り最大手が動いたことで人権対応が中小企業にも広がりそうだ。

 イオンは2021年2月1日、生産委託先やサプライヤーの従業員が人権侵害を受けた際、相談できる窓口「お取引先さまホットライン」を開設した。サプライチェーンの末端でも活用できる苦情処理メカニズムを作るのは、日本の小売りでは初めてのことだ。

 イオンのPB(プライベートブランド)「トップバリュ」の委託先は国内に900社、海外に300社あり、原材料の生産者は数万に及ぶ。これまでサプライヤーに法令順守や環境・人権配慮を求める「サプライヤー取引行動規範(CoC)」を03年に策定し、トップバリュの最終加工場を2年に1度監査してきた。だが、さらに上流のサプライヤーにはなかなか目が行き届かず、18年度に実施した「人権デューデリジェンス」では原材料生産者や外国人労働者を重点課題と特定した。

 19年度にはトップバリュの生鮮食品の売り上げの65%以上を占める主要品目の委託先(国内53社、海外11社)にアンケートを実施した。その結果、農畜水産物の生産事業者は国内892社、海外80社に上るが、そのすべてにはコンタクトできていないことや、国内生産事業者の従業員のうち14%、海外生産事業者では4%が外国人労働者だと分かった。「外国人労働者や1次産業のリスクを低減するためホットラインを構築することにした」と環境・社会貢献部イオンサプライヤーCoC事務局マネージャーの木村紀子氏は言う。

8言語に対応

 ホットラインは人権NGO「ザ・グローバル・アライアンスフォー・サステイナブル・サプライチェーン(アスク)」と共同で作った。サプライヤーの従業員は、ウェブサイトのフォームやメール、電話、スマートフォンのアプリケーション「Genba-Wise」を使って相談する。スマホではチャット形式で相談できる。

 窓口はアスクが担う。相談者が希望すれば匿名でイオンに報告し、イオンとアスクで委託先やサプライヤー企業に働きかける。まずは国内サプライヤー向けに、外国人労働者も利用できるよう8言語で準備した。

■ イオンが作った苦情処理の仕組み
■ イオンが作った苦情処理の仕組み
■ イオンが作った苦情処理の仕組み
委託先やサプライヤーの従業員は人権侵害を第三者機関による窓口に相談する。スマホアプリでも相談できる
(写真:アスク)

 世界では投資家による企業の人権格付けが進む。日本は人権の国別行動計画を20年策定し、人権配慮の機運が高まっている。小売り大手のイオンがサプライチェーンに苦情処理の網をかけたことで、人権対応の波は中小企業にも広がるだろう。