コロナ対応の資金繰りに、これまで蓄えた内部留保が役に立った。ただし、人材投資を抑えた経営は、企業成長を阻害しかねない。

 ニッセイ基礎研究所は2021年1月12日、新型コロナウイルスによる影響を受ける前と後の企業財務の変化について調べた結果を公表した。

 コロナ禍による国内企業の影響を財務省の法人企業統計調査で確認すると、20年4〜6月期の売上高はコロナ前の前年同期と比べて61兆円、17.7%の大幅減少となった。4月に緊急事態宣言が発出されて企業活動が制約された上、外出自粛によって需要が急減したためだ。

 企業の財務面では、6月末の借入金・社債が51兆円と大幅に増えた他、現預金も23兆円増えている。売り上げ減少による資金繰りの悪化を受けて、借り入れや社債の発行で手元資金を確保したことが分かる。

 注目は、利益剰余金が8兆円減少しているところだ。コロナ禍で企業収益は大きく低下したが、これまで蓄積してきた内部留保を取り崩すことで、その影響を最小限にとどめている。これまで内部留保は、資金が有効に使われない景気回復の阻害要因と見なされてきた。経済研究部上席エコノミストの上野剛志氏は、「内部留保の存在意義が見直されつつある」と分析する。

■ コロナ前後の企業の財務状況
■ コロナ前後の企業の財務状況
出所:財務省「法人企業統計調査」

 企業が内部留保を蓄えてきた実態も、データが示している。

 09年度から18年度にかけて、営業利益や給与などを合計した付加価値額が増加している一方、人件費はほぼ横ばいで推移している。その結果、人件費を付加価値額で割った労働分配率が大きく低下した。この傾向はアベノミクスが軌道に乗り始めた13年度以降で顕著に表れている。

■ 人件費と付加価値の推移
■ 人件費と付加価値の推移
出所:ニッセイ基礎研究所