人件費の増加を抑えた結果、企業の損益分岐点が下がった。09年度以降、売上高が増加する一方、損益分岐点売上高は下降気味に推移。売上高における損益分岐点の比率を示した損益分岐点比率は、大きく下がっている。つまりコロナ前の日本企業は、人件費を抑えることで売り上げが減少しても利益を出せる高収益体質をつくってきた。

 ただし、人件費の抑制に頼った経営には、落とし穴もある。付加価値を生む源泉こそ、人だからだ。人材投資の抑制は、企業の衰退につながりかねない。

■ 売上高と損益分岐点の推移
出所:ニッセイ基礎研究所

 09年度から18年度までの業種別の人件費と付加価値の関係性を見てみると、人件費の増加率が高い企業ほど、付加価値の増加率が高いことが分かる。

■業種別の人件費増加率と付加価値増加率の関係(2009~18年度)
出所:ニッセイ基礎研究所

 賃上げ余力のある企業は、業務のデジタル化で先行している企業が多い。従来の職場内訓練(OJT)に頼らず、デジタル技術を活用した人材育成や働き方を付加価値へつなげる仕組みづくりが求められる。過大な内部留保は、アクティビストの標的にもなり得る。危機時に頼りになる内部留保だが、成長投資とのバランスを考える必要がある。