日本の「脱炭素」宣言は実現可能なのか、識者のインタビューをシリーズでお届けする。第1回は、エネルギー政策に詳しい東京大学公共政策大学院の本部和彦客員教授に聞いた。

 日本政府は2050年カーボンニュートラル(実質ゼロ)の実現に向けて30年までの温室効果ガス削減目標とエネルギー利用に関する「エネルギー基本計画」を見直し、21年7月にまとめる。資源エネルギー庁次長を経て経済産業省を退官後、東京大学公共政策大学院客員教授を務める本部和彦氏に、見直しを巡る課題を聞いた。

東京大学公共政策大学院 客員教授 本部 和彦氏
(写真:北山 宏一)

欧米並みの目標強化も

菅義偉首相が、意欲的な30年目標を表明する方針を明らかにした。

本部 50年実質ゼロを宣言したのは英断だが、現在の30年目標を大幅に強化せざるを得ない。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などの科学的知見がこの2つの実現を求めているからだ。50年実質ゼロを実現するために毎年、一定割合で削減するなら、30年に13年度比で40%以上の削減が必要になる。

 欧州連合(EU)はなるべく早期に排出量を大幅に減らすことを支持しており、30年目標を1990年比で55%削減に引き上げることを決めた。米国も、21年11月に開催される気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)までに、オバマ政権時代の目標を大幅に強化する可能性が高い。

 日本は15年、現在の30年目標を当時の欧米の目標と比べて遜色ないレベルとして採用した経緯がある。米欧が40~50%台に目標を強化するなら、菅政権が同じような厳しい目標を採用する可能性がある。

日本はその目標を達成できるか。

本部 達成は不可能ではないが、3つの覚悟をせざるを得ない。1つ目は高額な電気料金、2つ目は産業競争力の維持、3つ目は既存の原子力発電を使い続けることだ。

 電気料金が高くなるのは、日本は安価な再エネ資源に乏しいからだ。発電コストの高い再生可能エネルギーを主力電源として利用拡大し、20〜30年代に大幅な削減を実現すると電気料金はどうしても高くなる。