政府は20年末、50年の脱炭素化に向けた「グリーン成長戦略」を示し、洋上風力発電や水素の普及拡大を盛り込んだ。30年までに全国で1000万kW分の洋上風力を建設するという。
本部 その洋上風力も、年間を通じて強い偏西風が吹く欧州に比べて、風況に恵まれていない。我々が日本海沖の洋上ウインドファーム有力候補地の4地点で平均風速を評価したところ、冬は強風が吹くが、夏の風速は約4カ月にわたり月間平均風速が毎秒6mを下回ると分かった。年間平均風速は毎秒7.7mだ。
一方、欧州の北海にある洋上ウインドファーム7地点では年平均で毎秒10mの風速が得られる。出力9500kWのヴェスタス製風力発電機を使うと想定すると、欧州の年間平均風速なら1年間に約4500万kWhの発電を期待できるが、日本はその65%に当たる同約2900万kWhしか発電できない。夏でも欧州は十分な出力が得られるが、日本では平均出力が約20%に落ち、出力が10%以下になる時間帯も欧州に比べて圧倒的に長く、数日に及ぶこともある。
年間を通じた風車利用率が低いため発電コストが高く付き、発電事業の儲けは薄くなる。加えて夏の出力低下を補うために保有する他の発電設備がさらにコストを押し上げる。現在の電気料金よりも高くなるのは確実で、欧米と比べても高くなる。
電気料金の値上がりは産業や国民に影響が及ぶ。どう抑えるか。
本部 使用電力量が多い個人など一部の利用者の料金を高くし、国際競争にさらされる産業の料金を抑える方法が考えられる。EUでは同様の制度を導入している。

(2つのグラフの出所:東京大学公共政策大学院(本部和彦客員教授、立花慶治客員研究員)「風況の差による洋上風力発電経済性日欧比較」)