米民泊大手が株式公開し、宿泊部屋の提供者に920万株を割り当てる。取締役会にステークホルダー委員会を置き、持続的発展を目指す。

 米国でテレビを観るとエアビーアンドビーによる一風変わったCMに出くわす。

 「自宅を宿泊者に貸し出すことで、収入が増えて、生活が安定した」と一般のホストが出演して語るという内容だ。宿泊するゲスト(客)ではなく、ホスト(部屋の提供者)を増やすことを狙っており、日本にはないタイプのテレビCMと言える。

 同社のブライアン・チェスキーCEO(最高経営責任者)は、2007年に米サンフランシスコの自宅を旅行者に貸し出すことからこの事業を起こした。今ではホスト400万人、ゲストは累計で8億2500万人に及ぶ。ホストが得た収入は1100億ドル(約11兆3300億円)に達するという。

 驚異的な成長を引っ提げて同社は20年12月に株式の新規公開を果たした。19年の売上高は48億ドル(約4944億円)、純損益は6億7000万ドル(約690億円)の赤字だが、時価総額は877億ドル(約9兆331億円、20年12月時点)を誇る。投資家はその成長性に注目している。

エアビーアンドビーが株式を公開した2020年12月10日、ブライアン・チェスキーCEOがニューヨークのナスダックの電子画面に表示された<br><span class="fontSizeS">(写真:AP/アフロ)</span>
エアビーアンドビーが株式を公開した2020年12月10日、ブライアン・チェスキーCEOがニューヨークのナスダックの電子画面に表示された
(写真:AP/アフロ)

 株式公開に当たって注目を集めたのはチェスキーCEOが2つの宣言をしたことだ。1つはステークホルダー(利害関係者)経営の推進で、その定義を明確にした。2つ目はホスト向けに920万株を割り当てることだ。

ステークホルダー経営を宣言

 1つ目のステークホルダー経営については、ゲストとホスト、地域社会、株主、そして従業員をステークホルダーと定義し、それぞれに推進と達成の指標を設けた。指標にはゲストであればその快適性や安全性、従業員であれば採用においてのダイバーシティー(多様性)推進などを設けている。着実な推進のためにステークホルダー委員会を取締役会に設置し、同社のCOO(最高執行経営責任者)だったベリンダ・ジョンソン氏が取締役として委員会の議長に就く。チェスキーCEOは「通常の会議のように委員会を開いて議論したい」と意欲を語る。

 2つ目のホスト向けへの920万株の割り当ては優先株を利用する。同社はチェスキーCEOら経営幹部3人が大株主となり、合計で約2億株を所有して、議決権の43%を占める。経営権を抑えながらも、それとは別にホスト向けの新株を発行して、「ホストの持続的成長に使う」(チェスキーCEO)という。20年12月時点の株価(149ドル)から換算すると約14億円の巨額資産となり、使途が注目される。

 チェスキーCEOがコロナ禍のこの時期にあえて株式公開をしたのは、成長への自信を深めているからだ。19年12月には284万人のゲストがいたが、20年4月には87万人まで落ち込んだ。それが同年9月には239万人まで盛り返している、海外旅行は激減したが、近隣の小旅行が回復しているという。「宿泊客が多い大型ホテルよりも、民泊が好まれる傾向もある」(チェスキーCEO)。

 世界的に観光や旅行業界が苦戦する中で自社とホストの持続的成長ができるのか。そのステークホルダー経営に注目が集まる。