「3年間の実証を経て、30年代半ばまでに全ての石炭火力発電所で20%混焼を実現する。40年代には専焼プラントへのリプレースを進め、50年ゼロエミッションを目指す」と、尾崎氏は脱炭素化の道筋を描く。

サプライチェーンの構築を急ぐ

 燃料アンモニア導入拡大の障壁になっているのが原料の調達だ。そもそも世界の生産量は2億t程度で、9割が生産国で消費され、輸出に回るのは2000万tというのが現状だ。

 ところが石炭火力発電1基(100万kW)でアンモニア20%混焼を行うとすると年間約50万tのアンモニアが必要になる。国内の全ての石炭火力で20%混焼を行うには2000万tが必要だが、これは現在の世界全体の貿易量に匹敵する。

 「アンモニアの利用を拡大するには、低価格・安定供給が可能なサプライチェーンの構築が不可欠。商社や電力、運輸、化学メーカーなどが集まる協議会で情報共有しながら、官民協力して取り組んでいく」(資源エネルギー庁資源・燃料部政策課)

 課題はアンモニアの材料となる水素のコストだ。水素製造には主に2つの方法がある。1つは天然ガスを改質して水素を取り出す方法、もう1つは再生可能エネルギーの余剰電力で水を電気分解して水素を取り出す方法。前者は石油・天然ガスの産出国、後者は再エネ適地の北米やオーストラリア、アジアなどと連携する必要がある。

 現在のアンモニア価格で発電価格を試算すると、20%混焼では1kWh当たり12.9円となり、石炭火力の同10.4円の約1.2倍に収まる。それが100%の専焼になると同23.5円となり、化石燃料に対抗できない。高効率の発電技術の開発とともに、製造・輸送コストの安いサプライチェーンの構築が必須なのだ。

アンモニア混焼の実証実験が計画されている碧南火力発電所の石炭火力発電プラント
(写真:JERA)
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 もう1つの課題は、天然ガスなど化石燃料からアンモニアを製造する場合、生産国でのCO2排出をどう抑えるかだ。燃料アンモニアの利用によって国内のCO2排出を大幅に削減できたとしても、サプライチェーンの上流にある生産国で大量のCO2を排出したのでは、環境NGOやESG投資家だけでなく社会が納得しないだろう。

 「CO2回収・貯留(CCS)やカーボンリサイクル、クレジット(排出枠)によるオフセットなどを活用し、生産段階でも環境に配慮した燃料であることを確認できる仕組みや制度を設けていく」(エネ庁担当者)

 脱炭素化の「現実解」として実用化へ動き出した燃料アンモニア。CO2フリー燃料としての価値をどう確保するかが普及の鍵になる。