航空業界にとって脱炭素は事業継続のための最重要課題である。日本航空はコロナ後を見据えて資金調達基盤の強化に動く。

 日本航空(JAL)は2022年3月、航空業界初となるトランジションボンド(移行債)を発行する。年限は5年、発行金額は100億円を予定する。

 トランジションボンドは、資金使途を脱炭素への移行プロジェクトに限定した債券で、グリーンボンドやソーシャルボンドといったESG債の一種である。CO₂排出量が比較的多く、一足飛びに脱炭素を実現するのが難しい業種で発行するケースが増えている。

 航空業界もその1つだ。JALは2050年に自社のCO₂排出量を実質ゼロにする目標を掲げる。大型の航空機を30年までに省燃費型の最新鋭機に切り替える計画で、その費用に今回のトランジションボンドで調達する資金を充てる。

 日本航空財務部部長の木藤祐一郎氏は、「設備投資が巨額なため、資金調達の可能性を広げておきたい。環境対策に後ろ向きと見られれば投資家に逃げられる恐れがある。トランジションボンドを発行することで脱炭素の本気度を示せる」と言う。

 世界でインフレが懸念され、足元では長期金利が変動しているが、「(ESG債に)投資家の需要が集まって、結果的に利率が下がることも期待している」(木藤氏)。

■ JALが発行予定のトランジションボンドの概要
■ JALが発行予定のトランジションボンドの概要
日本航空はトランジションボンドを発行し、仏エアバスの「A350」などへの更新に必要な資金を調達する<span class="fontSizeS">(写真:日本航空)</span>
日本航空はトランジションボンドを発行し、仏エアバスの「A350」などへの更新に必要な資金を調達する(写真:日本航空)

海外投資家にも訴求

 日本証券業協会によると、国内でのESG債発行額は21年に2兆9270億円となり、前年から約4割増えた。増加の一途をたどるESG債だが、環境や社会課題の解決につながっているか、プロジェクトの信頼性や効果を厳しく問われるようになっている。環境への貢献をアピールするつもりが、ただの見せかけ(ウオッシュ)と見なされれば、「逆の(良くない)レピュテーションが生じる可能性がある」(木藤氏)。

 そこで、JALはトランジションボンドの適合性評価に関して、蘭サステイナリティクスからセカンドオピニオンを取得した。JALの株主に欧米の機関投資家が多いこともあり、国際的に認知度が高い第三者評価機関からお墨付きを得ることで、信頼性を確保できるとみる。発行後は、資金の充当状況やCO₂削減効果などを開示する。

 JALは、30年にはコロナ前の19年と比べてCO₂排出量を10%削減するのが目標で、そのうち約60%を航空機の更新で減らす。今後もトランジションボンドを発行し、必要な資金を調達する予定だ。

 航空業界はコロナ禍で大きな打撃を受けているが、JALはコロナ後を見据えて、最重要課題である脱炭素を実現するため資金調達基盤を強化する。