りそなアセットマネジメントは投融資が及ぼすインパクトを金額換算した報告書を発行した。三井住友トラストHDは世界経済フォーラムが提唱する指標に従う報告書をいち早く発行した。

りそなアセットマネジメントのスチュワードシップ報告書
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 企業に情報開示を求める金融機関から、自社のESGを開示する“攻め”の報告書の発行が相次いでいる。

 りそなアセットマネジメントが2021年1月に発行したスチュワードシップ報告書は、自らのESG投融資が社会にもたらす価値を金額換算した「インパクト評価」を日本の運用機関として初めて開示した。企業に国連の持続可能な開発目標(SDGs)への実質的な成果を求めて、効果的なエンゲージメントをするのが目的だ。

 三井住友トラスト・ホールディングス(HD)が21年1月に発行したサステナビリティ報告書は、世界経済フォーラム(WEF)が20年に発表したサステナビリティに関する統合的な報告基準を用いて開示した報告書だ。20年のWEF年次総会(ダボス会議)で最大のテーマとなった「ステークホルダー資本主義」に沿う構成になっている点が特徴的だ。

インパクトを金額で算出

 両社の報告書に共通しているのは「パーパス(目的)」を明記したこと。りそなアセットの執行役員で責任投資部長の松原稔氏は、「当社が目指していることを明確に打ち出した。企業はどの運用機関と付き合いたいか見極める材料にしてほしい。企業と金融機関は互いに選び選ばれる関係であるべき」と話す。

 りそなアセットの報告書は、日本の運用機関として初めてマテリアリティ分析の結果も開示した。縦軸を「サステナビリティ上の重要性」、横軸を「長期運用のパフォーマンスからみた重要性」とし、様々なESG課題をプロットした。気候変動やダイバーシティ、腐敗防止、生物多様性・森林保全などを最重要課題と位置付けた。

 気候変動のページでは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づき1.5℃シナリオでの分析結果も開示した。自社のポートフォリオによる温室効果ガス排出量と1.5℃シナリオで許される排出量を比較。同社が運用する国内株式では31年に許容量を超えることが分かった。「投資先企業に脱炭素社会への対応を求め、そうした企業を組み込んだインデックスの選択が必要になる。企業とエンゲージメントを行う際、科学に基づく削減目標(SBT)の設定や開示を急いでほしいとお願いしたい」(松原氏)。

 さらに、この報告書がユニークなのは投融資などの資金提供が社会に与えるインパクトを金額で算出したことだ。実際に購入(投資)したESG債で、温室効果ガス排出量の削減/回避、土地改善・森林再生、雇用創出でどの程度のインパクト(社会的価値)を生み出したかをドルで算出した。温室効果ガス排出量の削減/回避のケースでは、様々な分析結果を用いて、温暖化による建築コスト増や農業・土地の生産性の損失、健康被害を回避することで生まれる社会的費用を算出した。

 土地改善・森林再生の場合は、1haの森林の再生で生まれた木材提供や炭素固定、レクリエーションなどの生態系サービスが経済・健康・文化の価値をどの程度創出したかを複数の研究データから算出した。

■社会的インパクトを評価して金額換算
りそなアセットはESG債の「温室効果ガス排出量削減」「土地改善・森林再生」「雇用創出」の社会的価値を金額換算した。上図は「温室効果ガス排出量削減」のケース
(出所:りそなアセットマネジメントの報告書の図を基に編集)
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