経済産業省は脱炭素を目指す企業を束ねて、自主的な排出削減を促進する。これまで否定的だった排出量取引に参画する裏には、企業の深謀遠慮がうかがえる。

 「議論の席に着かないまま、知らぬ間にルールが出来上がる事態は避けたい」。製造業や電力・エネルギー業界の役員が口をそろえる。2022年2月1日、経済産業省が基本構想を発表した「グリーントランスフォーメーション(GX)リーグ」のことだ。

 GXリーグは、50年のカーボンニュートラル(脱炭素)を掲げる企業が自主的に参加する枠組みだ。22年3月末までに「賛同」した企業は、排出量取引を含むリーグ内のルールづくりに参加できる。経産省は賛同企業を交えて約1年かけて詳細を詰める。23年4月には、GXリーグに「参画」する企業を募って本格運用を開始する。

 参画企業は30年の削減目標を自主的に設定する。目標を超過達成すると、超過分をクレジットとして売却できる。目標に届かない場合は、取引市場を通じてクレジットを調達する他、国内のCO₂削減事業から発行されるJクレジットなどを調達して埋め合わせをする。

 達成できない場合も罰則は設けないというが、経産省はクレジット購入実績を公表する方針。未達のままならESG投資家などから指摘を受ける可能性がある。資本市場は、未達を防ぐ抑止力として期待されている。

■ GXリーグ構想のポイント
■ GXリーグ構想のポイント

将来の締め付けに警戒も

 脱炭素に取り組む企業を束ねる仕組みのため、ESG経営に取り組む多くの企業が賛同しそうだ。あるメーカーの幹部は「温室効果ガスの排出が多い企業は賛同する方向」とみる。

 化石燃料を利用せざるを得ない企業はこれまで、脱炭素のための技術革新の原資が奪われるとの理由から排出量取引制度の導入に反対してきた。にもかかわらず、GXリーグに参画するのはなぜか。

 背景には、経産省が今後、企業への締め付けを強化するとき、GXリーグを活用するとの見方がある。国全体の排出削減が進まない場合、企業の自主性に委ねず、政府が排出量を管理する制度への移行も視野に入れていると、経産省は明らかにしている。賛同してルールづくりに加わるのが有利と考える企業が大勢のようだ。

 また経産省は、GXリーグを、50年に国全体で実質ゼロを達成する際に必要となる「仕組みの準備」と位置づけた。将来、削減しきれない排出量(残余排出量)を、森林などによる吸収や国内外で調達するクレジットで相殺する仕組みを議論することになるとみられる。GXリーグはその土台となる可能性もある。

 企業の自主性に委ねているGXリーグの効果は未知数。施行後の運用次第で骨抜きにもなりかねない。ただ、ここでつくられるルールが、後々の企業の温暖化対策を左右するのは間違いなさそうだ。