米ゲーム小売りチェーンの株価暴騰が、市場に衝撃をもたらした。影響力を強める個人投資家は、ESG投資でも存在感を高めそうだ。

 個人投資家が巨大ヘッジファンドを締め上げた─。2021年1月下旬、突如巻き起こった米ゲーム小売りチェーンのゲームストップを巡る騒動が、米国株式市場を揺らしている。

 ヘッジファンドが仕掛けた空売りに対抗し、個人投資家が同銘柄を一斉に買い入れた結果、20年末に19ドル弱だった同社株価は一時、25倍以上の483ドルに暴騰。ヘッジファンドは損失を出しての買い戻しを強いられた。

 この出来事は米国を舞台にしたものだが、日本にも波及した。

 マネックス証券では、21年1月25~31日の米国株式の売買代金ランキングでゲームストップが圏外から3位に急浮上した。同社の福島理・企画広報部長は、「これまで週1~2件だったゲームストップ株の取引件数が、100倍以上になった」と話す。

 米国で個人投資家の“武器”となったのが、スマホ証券「ロビンフッド・マーケッツ」と、SNS(交流サイト)掲示板「レディット」だ。マネックスグループの松本大社長は21年1月29日の決算会見で、「SNSを使った日本の個人投資家が、米国の個人投資家と同じような動きをするようになった」と語った。

米ゲームストップ株の暴騰劇は、日本の個人投資家にも波及した
(写真:ロイター/アフロ)

スマホでインパクト投資

 スマホとSNSを駆使して投資活動をする個人投資家は、ESG投資でも存在感を高めそうだ。こうした個人投資家を取り込もうと、証券大手が動いている。

 マネックス証券は21年1月、社内にサステナブルファイナンス部を立ち上げ、ESG金融事業に本格参入した。個人投資家向けのESG商品を販売していく。4月以降、海外の再生可能エネルギー事業に投資する環境インパクトファンドを立ち上げる。風力発電機などにセンサーを取り付け、発電状況をスマホでリアルタイムに確認できる仕組みを導入する。環境へのインパクトを「見える化」し、ESG投資に関心のある個人投資家を取り込みたい考えだ。

 野村証券は21年2月5日、個人投資家に投資情報を提供するスマホアプリの配信を開始した。これまで機関投資家に提供していたリポートを個人投資家にも提供する。野村資本市場研究所は19年12月に「野村サステナビリティ研究センター」を設立し、ESG関連の情報発信や商品拡充に力を入れている。将来的にスマホアプリを商品販売につなげていきたい考えだ。

 企業にとって個人投資家の獲得は、自社のファンを増やし、株式の流動性を高める効果をもたらす。テクノロジーによって影響力を増した個人投資家は、ますます無視できない存在になりそうだ。