米金融のESGリーダーが、脱炭素と社会課題解決に注力する。投融資ポートフォリオのネットゼロを掲げ、ESG債の発行を支援する。

 米系金融業界においてESGファイナンスにいち早く取り組んできたバンク・オブ・アメリカ。同社の笹田珠生・在日代表に、脱炭素経済に向かって社会が変化する「移行(トランジション)」を推進するための支援について尋ねた。

トップダウンでESG推進

バンク・オブ・アメリカはトップダウンでESGに取り組んでいる。

笹田 珠生 氏
笹田 珠生 氏
バンク・オブ・アメリカ在日代表 BofA証券代表取締役社長
(写真:バンク・オブ・アメリカ)

笹田 氏(以下、敬称略) 米系金融機関でもいち早く、最高経営責任者(CEO)であるブライアン・モイニハンのトップダウンでESGに取り組んできた。2010年代から「責任ある成長」を戦略の根幹に据え、顧客や社員、コミュニティをはじめ幅広いステークホルダーのための経営を目指している。ESGの重要性は社員一人ひとりに浸透している。

 07年、グローバルで顧客向け融資やESG債引き受けなどのサービスを通じて、環境課題解決のための資金供給を支援することを、米銀で初めて表明した。当初、10年間で200億ドル(約2兆3000億円)の規模で始まり、その後も増額して継続し、21年4月には30年までに1兆ドルの環境関連ビジネスを通じて脱炭素経済への移行に貢献すると宣言した。

 同時に社会課題への配慮に関わる分野、人種やジェンダーの平等、手ごろな価格の住宅や、教育、医療などに5000億ドルの支援をコミットし、推進している。責任ある成長の具体策として強く推進していることの1つが、コミュニティに対する支援である。政府支援が行き届きづらいところへの配慮も重要である。

 CEOのモイニハンは、社内だけでなく世界の経済界のESG推進をリードしている。国際ビジネス評議会(IBC)議長として、「ステークホルダー資本主義指標」(企業による非財務情報開示を共通化させることを目的とする指標)のとりまとめを主導し、20年9月に発表した。この指標は翌年1月、世界経済フォーラムの60社以上が賛同した後、さらに賛同社数が拡大している。

ESG債発行の実績も豊富だ。

笹田 バンク・オブ・アメリカはこれまでに9回、総額約120億ドル分のESG債を発行した。13年には米銀初となる5億ドルのグリーンボンドを発行した。19年にも、米銀初となる5億ドルのソーシャルボンドを、20年は新型コロナウイルス感染症に対応する医療現場を支援する10億ドルのCOVIDボンドと、人種や経済的機会の平等、環境対策に関する取り組みを支援する20億ドルのサステナビリティボンドを発行した。

 自社の経験を生かし、顧客によるESG債の発行も支援している。07年の欧州投資銀行による世界初のグリーンボンドの他、16年には米スターバックスのサステナビリティボンドの引き受けをした。また、イタリア電力大手のエネルによる世界初のサステナビリティ・リンク・ボンドでは主幹事を務めた。14年に日本政策投資銀行が日本初のグリーンボンドを発行した際にも、引き受けを務めている。自社や顧客支援の経験を踏まえ、ドル建てのESG債では世界トップの実績を積んでいる。

グローバルでESG債市場が拡大傾向にある。

笹田 そうみている。当初、金融機関によるグリーンボンド発行が主流だったが、脱炭素経済への移行が求められ、事業会社による発行が拡大した。グリーンだけでなくサステナビリティや社会課題へと多様化し始めている。世界で20年に、19年の2倍の額のESG債が発行され、21年の発行額は1兆ドルに及んでいる。