欧州委員会は、脱炭素化への移行期に必要な発電技術として天然ガスと原子力を分類した。決定を巡り欧州連合(EU)加盟国の間で対立が続く中、日本への影響はあるのか。

 欧州委員会は2022年2月2日、持続可能な経済活動を分類するEUタクソノミーにおいて、天然ガスと原子力による発電を一定の条件下で「カーボンニュートラルへの移行期に必要な経済活動」に含めると発表した。

 EUタクソノミーは、気候変動対策などに必要な活動に、官民の投資を振り向けることを目的にしている。条件付きにせよ、発電時にCO₂を排出する天然ガスと、放射性廃棄物の処理が課題になっている原子力を「移行期に必要」としたことが各方面に波紋を広げている。

 原発を推進する国々が支持を表明する一方、グリーンを標榜する投資家や脱原発を宣言している国、環境団体などから反発の声が上がっている。オーストリアとルクセンブルクは、制度が施行された場合、EUの司法裁判所に提訴する方針だ。

EU加盟国間で賛否分かれる

 EUタクソノミーのうち、気候変動の緩和と適応に関する経済活動の基準を定める委任法令は21年6月に既に採択されている。ただし、天然ガスと原子力については加盟国の間で意見が大きく分かれていたため、判断が先送りされていた。

 EU域内の対立構造は、各国の電源構成を見れば明らかだ(下のグラフ)。水力や再生可能エネルギーの導入が進んでいるドイツやスペイン、オーストリアなどは委任法令に原子力を含めることに反対の立場を取る。逆に賛同を示しているのは、原子力が電力全体の7割近くを占めるフランスや、同3分の1を占めるフィンランド、ロシアの石炭に電力の多くを依存している現状からの脱却を目指すポーランドなどだ。

■ EU主要国の電源構成(2020年)
■ EU主要国の電源構成(2020年)
※その他の再生可能エネルギーには、バイオマスやバイオガス、廃棄物を燃料とする発電や、潮流発電、波力発電などが含まれる

原子力を「移行期の経済活動」に含める議論を巡る対立構造。再生可能エネルギーの導入が進むドイツやスペイン、水力が主流のオーストリアなどは反対の立場を取る。一方、原子力の導入に積極的なフランスや、ロシアの石炭依存から脱却したいポーランドなどが支持を表明している
(出所:eurostatのデータを基に日経ESG編集部作成)
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 今回、天然ガスと原子力が移行期に必要な活動として分類された背景には、21年にEU各国を襲ったエネルギー価格の高騰がある。

 20年にコロナ禍がもたらした経済不況から堅調に回復し電力消費が増加傾向にある中、国際的なサプライチェーンの混乱が続き、まず天然ガス価格が高騰、その影響を受けて卸売電力価格が記録的な上昇となった。加えて21年は北海の低風速に悩まされ、風力の発電量が伸び悩んだ。21年第4四半期の卸売電力価格は前年同期比で3~4倍に達し、特にドイツ、スペイン、ポルトガル、北欧などで価格上昇が顕著だった。天然ガスよりも石炭の価格上昇が小さかったことから石炭火力の発電量が10年ぶりに上昇。これに伴い発電量当たりのCO₂排出量も上昇した。