金利上昇で各社が起債を延期する中、東京ガスが移行債の発行に踏み切った。「化石燃料企業」から、脱炭素社会への移行を担う「移行銘柄」への転身を図る。

 東京ガスは2022年2月22日、都市ガス事業者初のトランジションボンド(移行債)を発行した。10年債と7年債で、発行額はいずれも100億円。利率は10年債が0.359%、7年債が0.26%である。調達資金は、同社の脱炭素事業「新居浜LNGプロジェクト」「スマートエネルギーネットワーク」「晴海水素事業」へ充当する。

東京ガスの新居浜LNGプロジェクト。移行債の調達資金を充当する。住友共同電力が新設する火力発電所へ天然ガスを供給し、中長期的には合成メタンを活用したCO₂排出ゼロのガス供給に挑む<br><span class="fontSizeS">(写真:東京ガス)</span>
東京ガスの新居浜LNGプロジェクト。移行債の調達資金を充当する。住友共同電力が新設する火力発電所へ天然ガスを供給し、中長期的には合成メタンを活用したCO₂排出ゼロのガス供給に挑む
(写真:東京ガス)

 発行社債の利率は、長期金利に連動する。指標となるのが新発10年物国債の利回りだ。日銀の金融緩和策を受けて近年は0〜0.1%程度で推移してきたが、米国の金融引き締め観測が日本に波及するなどして22年2月初めに0.2%を突破し、6年ぶりの高水準となった。

 金利が高くなれば企業の利払い負担が増える。2月から3月にかけて社債発行を延期する企業が相次いだ。東京電力フュエル&パワーと中部電力が出資するJERAをはじめ、日本航空などが起債を延期した。

脱「化石燃料企業」

 東京ガスが21年7月に発行した普通債(150億円、年限10年)の利率は0.17%だった。今回の移行債の利率はこの倍だ。こうした状況下で、なぜ起債に踏み切ったのか。

 大きな理由が、「化石燃料企業」のイメージ払拭だ。同社は50年の脱炭素を目指し、21年11月に30年までの移行施策を発表した。30年までに工業分野においてCO₂排出が少ない天然ガスへの燃料転換を進める。30年以降は、CO₂排出ゼロのメタン合成や水素の利用に移行する。

 経理部長の曽我豪氏は、「化石燃料を扱っているというイメージだけが定着すると、投資家は離れていってしまう。移行施策の発表から間を空けずに移行債を発行し、移行の本気度を示したかった」と話す。

 ESG債に対する投資家の高い需要も発行を後押しした。移行債の注目度は高く、調達予定額の2.3倍の投資表明があった。

 起債が普通債だった場合、利率は移行債より高くなった可能性があると同社はみている。今後、移行債を継続的に発行して、脱炭素社会への移行を担う「移行銘柄」としての認知度を高めていきたい考えだ。

 化石燃料を扱うエネルギー企業は、脱炭素移行の成否が存亡を決める。長期的に資金調達を有利に進められるか。ESGが鍵を握る。