澤田純社長が国会で釈明したが、本格的な捜査が始まる可能性も残る。海外投資家は、日本企業のガバナンスの真偽を見極めようとしている。

 2021年3月15日、総務省幹部への接待問題をめぐり、NTTの澤田純社長が参議院予算委員会に参考人として出席した。国家公務員倫理法と倫理規定では、利害関係者からの接待を禁止している。澤田社長は、18~20年に総務省幹部との会食が3回あったとし、「認識が甘かった」と謝罪した。会食の意図については、「業務上の要請をしたり便宜を図ってもらったりしたことはない」とした。

総務省の接待問題をめぐり、参院予算委員会に参考人として出席したNTTの澤田純社長
(写真:毎日新聞社/アフロ)

 NTTからすると国は、発行株式の3割を持つ筆頭株主である。この問題をコーポレートガバナンスの視点で見るとどうか。

 会社法では、取締役は良識と高度な注意をもって業務を遂行しなければならない「善管注意義務」を負う。会食が、経費を使って少数株主に損害を与えたと見なされれば、善管注意義務違反として株主が訴訟を起こすこともできる。

 しかし今回は、その可能性は低そうだ。最初に報道が出た21年3月3日に2700円台だった株価の動きはその後も堅調で、参考人招致があった15日以降も2900~3000円台で推移している(3月末時点)。大方の株主は、監督官庁との意見交換は業務の一環で、会食費用も株主に損害を与えるほどではないという考えだろう。

 では、これで終わりかというと、そうでもなさそうだ。今回、市民団体が刑法の贈収賄罪の疑いで東京地検に告発状を提出しており、この先、検察がどう動くのかが焦点となる。牛島総合法律事務所の牛島信弁護士は、「本格的な捜査はここから始まる」と予想する。

 日本コーポレート・ガバナンス・ネットワークの理事長を務め海外投資家の事情にも詳しい牛島弁護士は、「海外投資家は、NTTなど日本を代表する企業を通して、日本のガバナンス改革が本物かどうか見極めようとしている」と話す。

ガバナンス改革は本物か

 不正会計問題をきっかけにガバナンス改革を進めてきた東芝もそうした企業の1つだ。同社は21年3月18日の臨時株主総会で、20年の定時株主総会の運営について再調査を求める株主提案を可決。投資家からガバナンスに「ノー」を突きつけられた。

 20年の株主総会では、集計業務を担った三井住友信託銀行が議決権の一部を集計していなかった事実が判明している。また、株主提案したエフィッシモ・キャピタル・マネージメントの代理人は総会で、「米国の株主に対して議決権行使について圧力を加えたという報道がある」と発言し、同社のガバナンスを疑問視した。今後は、エフィッシモが選任した3人の弁護士が調査に入る。

 日本企業のガバナンス改革は見せかけなのか─。こうした疑念が広がれば、日本市場に投資を呼び込むことは難しくなる。投資家との対話を通して、透明性ある調査と説明が求められる。