生物多様性や自然資本の分野で、基準や開示の枠組みづくりが欧州主導で進んでいる。投資家は生物多様性のインパクト評価も始めた。日本は投融資で後れを取る可能性がある。

国連総会の生物多様性サミットで演説するグテーレス国連事務総長
国連総会の生物多様性サミットで演説するグテーレス国連事務総長

 生物多様性の次期国際ルール「ポスト愛知目標」を採択する生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)が、2021年10月に中国・昆明で開催されることが決まった。愛知目標の多くが未達成に終わったことから、ポスト愛知目標には多くの数値目標を盛り込み、生物多様性への取り組みの進捗を管理することが提案されている。

 30年までに生物多様性の劣化を食い止め、回復に転じさせるため、投融資によって持続不可能な生産と消費の流れを変える機運が世界で高まっている。この動きを後押しし、主導権を握っているのが欧州だ。

ダスグプタ報告書
ダスグプタ報告書

 英国財務省は21年2月、生物多様性と経済の関係を分析した英ケンブリッジ大学のダスグプタ教授による報告書「ダスグプタ・レビュー」を発表した。1992~2014年に世界人口1人当たりの自然資本は40%減少したと試算し、生産と消費の見直しや金融の意思決定に自然資本の価値を組み込む変革が必要だと提案した。

 仏政府は国際標準化機構(ISO)に生物多様性の専門委員会TC331の設置を提案した。TC331は20年8月に発足し、フランスが幹事を担う。バリューチェーンを通して生物多様性のインパクト評価や進捗管理を行うための原則や枠組みをつくる。

生物多様性と食料の2本戦略

 欧州は生物多様性・自然資本の分野を気候変動と互いに補完し合う重要なテーマだと捉えている。EUの新成長戦略「グリーンディール」は50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを打ち出したが、それを支える戦略として、20年5月に「生物多様性戦略2030」と「農場から食卓まで戦略」を発表した。

 前者は企業の意思決定に生物多様性の価値を組み込む基準づくりを進めることを定める。EUの気候変動対策予算の25%弱を森林などの「生物多様性と自然に基づく解決策」に投資することも定めた。後者の食料の戦略は、企業の土地利用にメスを入れる。食料のサプライチェーンで排出される温室効果ガスは人為起源CO2の3割を占め、生物多様性への負荷も大きい。同戦略は30年までに農地の25%を有機農地にし、殺虫剤の使用を50%削減するなどの数値目標を盛り込んだ。

 欧州が生物多様性の保全に力を入れる背景には、食料問題や、新型コロナ感染症のような人獣共通感染症など新たな自然のリスクが高まっていることも一因だが、生物多様性と気候変動を一体で対策して世界をリードすることでサステナブル金融を呼び込みたい思惑もありそうだ。