日本企業の強みに着目したESG評価手法を導入した。企業が脱炭素製品・技術を世に送り出した努力などを考慮する。

 野村アセットマネジメントは2022年2月、運用対象となる日本企業のESG評価に使うESGスコアの改定を発表した。企業が開示する非財務情報を使って気候変動に関する分析や評価をする際に、温室効果ガス排出量だけでなく「吸収量」の情報も生かす。

 吸収量を(1)除去量と、(2)削減貢献量、(3)クレジットでオフセット(相殺)した量と定義した。(1)の例には、企業が管理する森林が吸収したCO₂が挙げられる。他に、CO₂を回収して地中に貯留したり、合成燃料の原料にしたりするCO₂回収・利用・貯留(CCUS)技術でCO₂を固定する方法もある。

 (2)は顧客や消費者が、企業が販売した製品や技術を使うことで減らせた温室効果ガス排出量のことだ。省エネ製品や再生可能エネルギー電力などの低炭素・脱炭素の技術を提供した企業は、客先の削減に貢献していると見なせる。

 (3)は、他者が実施した(1)や(2)の実績を「クレジット」として購入し、自社の排出量を相殺する。

■ 野村アセットはESG評価で日本企業の強みに着目する
■ 野村アセットはESG評価で日本企業の強みに着目する
森林経営によるCO₂除去量などを考慮する
(出所:野村アセットマネジメントの資料を要約、写真:武藤守/ アフロ)

「企業の努力、評価したい」

 野村アセットは、企業の排出量を評価する他、温室効果ガスを排出することによる経済的な影響(財務インパクト)を炭素価格を使って算出し、企業のESG評価に生かしてきた。今回新たに、企業の排出量から吸収量を差し引いてESG評価をすることにした。

 世界では、特に(2)の削減貢献量を、企業の削減実績や評価項目として着目していない。世界1256社が削減目標の設定基準として採用する「SBTイニシアチブ」もその1つだ。

 野村アセットも、SBTなどの方針を推奨する「ネットゼロ・アセットマネジャーズ・イニシアチブ(NZAM)」に参加し、自社の50年ネットゼロ目標や、「50年ネットゼロに適合する資産比率」を30年に55%に高める目標を21年10月に掲げた。その一方でESGスコアを改定したのは、「日本の企業は世界でも高い水準の低炭素・脱炭素の製品や技術・サービスを世に送り出し、社会のCO₂削減や吸収に大きく貢献している。そんな日本企業の取り組みや強みを十分に評価したかった」と、評価手法を開発した同社責任投資調査部の山我哲平シニアESGスペシャリストは説明する。

 ダイキン工業やパナソニックをはじめ、省エネ機器やIT(情報技術)による削減貢献量を積極的に開示する日本企業は多い。日本ならではの強みが、企業価値評価に直結するようになってきた。