ロシアの軍事侵攻が、国際エネルギー価格や投資環境に影を落としている。経済の安定のため、国も企業も地政学リスクを踏まえた判断が要る。

 ロシアが2022年2月24日に始めた軍事侵攻は、ウクライナの領土や民間人の人命を脅かすにとどまらず、世界経済に多大な影響を及ぼしている。国際通貨基金(IMF)は3月15日、ウクライナ情勢により世界全体で経済成長の減速とインフレが加速が続くとの見通しを示した。二重苦の背景には、食糧とエネルギーの価格急騰が招いた物価上昇、需要の減退がある。

 ロシアやウクライナが世界輸出の約3割を担う小麦価格が過去最高を記録。石油・天然ガスの国際価格も急騰している。3月6日に米国がロシア産原油の禁輸を検討していると報じられると、7日のロンドン市場でブレント原油価格が一時1バレル139ドル台と08年のリーマンショック直前を超す最高値を付けた。

エネルギー投資は「安定」模索

 国際エネルギー市場におけるロシアの存在感は大きい。欧州は21年、石油輸入量の27%程度、天然ガス輸入量の45%程度をロシアに依存していた。そんな中、ドイツ政府は22年2月、ロシアと直結する新しいガスパイプライン計画「ノルドストリーム2」の認可を取り消す方針を発表した。あおりを受けたのが、計画に出資していた独エネルギー大手ユニパーだ。同社は3月7日、9億8700万ユーロ(約1240億円)の減損を発表した。

ドイツ北東部にあるノルドストリーム2建設中に作業員がパイプにフタをする様子。撮影は2019年3月26日<br><span class="fontSizeS">(写真:AFP/ アフロ)</span>
ドイツ北東部にあるノルドストリーム2建設中に作業員がパイプにフタをする様子。撮影は2019年3月26日
(写真:AFP/ アフロ)

 制裁が進みつつある今、エネルギー情勢に詳しい日本エネルギー経済研究所の小山堅・首席研究員は警鐘を鳴らす。「ロシア産燃料の供給が大規模に途絶すれば、欧州を中心にエネルギー市場の不安定化が一気に進む。必要なところでエネルギーを確保できない事態も起こり得る」。

 そんな危機感から「エネルギー安定供給を図る徹底的な対策強化が急務という認識が世界で急速に高まった」(小山首席研究員)。足元ではロシアからの供給途絶を想定しながら価格安定化を図るため各国が原油備蓄を放出する他、中東産油国の原油増産が重要な役割を果たしそうだという。

 中長期では、ロシア依存の引き下げが課題となる。国ごとにエネルギーミックス(燃料・電源の利用計画)の見直しが進みそうだ。欧州では再生可能エネルギーの利用が加速する他、フランスや東欧などで原子力発電のさらなる活用も進みそうだ。

 日本では、ロシア極東の石油ガス開発プロジェクト、サハリン1・2を巡る対応で難局が続く。既に英シェルなどの撤退が報じられた。サハリン1には伊藤忠商事や丸紅などの出資会社が、サハリン2は三井物産や三菱商事が出資している。

 萩生田光一経済産業大臣は22年3月15日、液化天然ガス(LNG)投資により「ロシア以外の供給源の確保」を進め「ロシアへのエネルギー依存度を低減する」と述べた。そのうえで、岸田文雄首相は3月16日の会見で、サハリン2について「エネルギー安定供給に重要」「長期的に低価格でエネルギーを調達できる、日本が権益を持つ事業」と述べた。