国連がプラスチックによる汚染を防ぐ枠組みづくりに着手する。企業は循環型経済へ移行し、規制対応の先にある商機をつかめるか。

 プラスチックごみ対策が、企業にとって気候変動と同等の重要課題になる可能性が出てきた。2022年3月に開催された国連環境総会(UNEA)で、プラスチック汚染防止のために法的拘束力のある国際約束を作成すると決めたからだ。

 過去にはUNEAでの決定事項が、「生物多様性条約」や「水銀に関する水俣条約」につながっている。プラスチック汚染についても条約が制定され、国に義務が課されれば、影響は企業にも及ぶ。

2024年に取りまとめ

 今回の決議に記された国際約束の内容には、「国別行動計画の策定、実施、更新」や「国際約束の実施状況と実効性に関する評価」といった項目があり、「パリ協定」のような枠組みがつくられることも想定される。22年後半に政府間交渉委員会を立ち上げ、24年末までに作業を完了させるのが目標だ。

 英エコノミスト・グループのシンクタンクであるエコノミスト・インパクト シニアエディターの近藤奈香氏は、「2年間の協議の結果、取り組みの成果にも法的拘束力を持つ合意ができれば、パリ協定より強力なものになり得る」と言う。

■ 決議文書に記された国際約束の主な内容
■ 決議文書に記された国際約束の主な内容
出所:環境省の資料を基に作成

 エコノミスト・インパクトは22年3月に日本財団と共同で発表した報告書で、プラスチックなど化学物質による海洋汚染が深刻さを増していると警鐘を鳴らす。例えば、海洋汚染の悪化による米国の水産業の損失は年間8億ドル(約970億円)超に上ると推計。逆に問題を解決できれば、最大で1億ドル超の収益増になるという。「海洋汚染は温暖化にも影響を与えており、意識をより高める必要がある」(近藤氏)。

 海洋プラスチック問題への注目度は増しているが、汚染の実態や影響に関する調査は進んでおらず、十分なデータがそろっていないという。UNEAの決議はプラスチックという特定の素材を対象にしているため利害が複雑に絡んでおり、議論は難航することも予想される。

 プラスチックごみ対策を巡っては、日本でも22年4月にプラスチック資源循環法が施行された。プラスチック製品の製造から販売、使用、回収・リサイクルまでバリューチェーン全体に網をかけ、プラスチック使用量の削減を促す。多くの企業は以前からプラスチックごみの削減を進めてきたが、法施行を機に対策を強化するところが目立つ。

 キリンビバレッジは22年4月、主力商品の「キリン 生茶」を6年ぶりにリニューアル発売する。中身の味を刷新しただけでなく、容器も変えた。525mℓと600mℓの商品については、商品名などを記載したプラスチック製ラベルを小さくし、プラスチック使用量を従来比約40%減らした。リサイクルPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂を100%使用したペットボトルの採用を、自動販売機専用の555mℓの商品にも広げた。