世界で加速している脱炭素が投資先企業の選定にも波及してきた。「2050年CO2排出実質ゼロ」が資金調達の条件になりつつある。

 第一生命保険は、投資先企業の温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにする。21年3月、運用ポートフォリオの脱炭素を目指す機関投資家の国際的なイニシアチブ「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス」に加盟した。

 同アライアンスには、独アリアンツや仏アクサ、米カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)といった35機関が加盟しており、運用資産総額は5.5兆ドル(約600兆円)に上る。日本の機関投資家で加盟するのは初となる。

1000万tを実質ゼロに

 第一生命は今後、株式・債券・不動産について25年までの目標を設定する。ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンスのガイドラインに基づいて、19年比16~29%の範囲で削減を目指すとみられる。

 現在のポートフォリオの温室効果ガス排出量は958万t(20年3月時点)。これを、再生可能エネルギーの活用などによって実質ゼロにする。排出量が多い企業に対して即、ダイベストメント(投資の引き揚げ)はせず、エンゲージメント(建設的な対話)によって削減強化を働きかける。ただし、積極的に取り組む姿勢が見られない企業は、株式を売却される可能性もある。

■ 運用ポートフォリオの脱炭素を目指す
■ 運用ポートフォリオの脱炭素を目指す
第一生命保険の運用ポートフォリオ(投資先企業)が排出するCO2は約1000万tある。エンゲージメントを軸に企業に対策強化を促し、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする
(出所:第一生命ホールディングス)

 第一生命保険運用企画部フェローエグゼクティブ・サステナブルファイナンス・スペシャリストの銭谷美幸氏は、「コロナ禍でS(社会)の課題がクローズアップされているが、気候変動は今一番喫緊の課題だ。50年までの脱炭素は待ったなしであり、投資家と企業、消費者とが健全な危機感を共有する必要がある」と言う。

 投資先の脱炭素に向けた取り組みとして、同社は21年2月に「パリ協定」の目標達成に準拠したファンド(投資信託)をアセットマネジメント Oneと共同開発した。ESG評価機関の米MSCIのインデックス(株価指数)「MSCI ACWI Climate Paris Aligned Index(MSCI気候パリ協定準拠インデックス)」に連動する投資信託で、まず200億円投資した。

 同インデックスは、気候変動の「移行リスク(規制強化など低炭素経済の移行に伴う影響)」と「物理的リスク(異常気象などが資産に与える影響)」を低減し、低炭素経済への移行に伴って生じる市場機会を得られる企業への投資割合を拡大するようポートフォリオを構築する。

 第一生命ホールディングス運用企画部運用調査室の黒田洋一郎マネジャーは、「再生可能エネルギーをはじめとする環境技術には、今後ビジネスチャンスがある。今回開発した投資信託は、シミュレーションで親指数(MSCI ACWI)より高いパフォーマンスを示しており、運用収益が見込める」と言う。