サプライチェーンにも影響

 第一生命は20年4月、ESG投資の基本方針を公表した。23年度までに、全資産の運用方針・運用プロセスにESGを組み込む。同社が重点的に取り組む社会課題の解決に向けた投資(テーマ型投資)を、19年度の約5500億円から2倍以上に増やす。足元では、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に資する債券や事業などに約7500億円を投じている。

 今回、約36兆円の資産を運用する同社が運用ポートフォリオの脱炭素化に踏み切ったことで、国内の投資家が追随する可能性がある。世界では、温室効果ガス排出量を投資先の選定に活用する動きが活発になっている。

 例えば、米ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントは、温室効果ガス排出量や保有資産に含まれる化石資源の量などに着目して気候変動リスクを低減する運用手法を開発した。既に、全てのクオンツ(計量)株式アクティブ運用に組み込んでいる。

 こうした投資家はサプライチェーン全体での脱炭素を求めている。投資先企業と取引がある企業も、取り組みを強化しなければ事業に影響が及ぶのは必至の情勢だ。

第一生命保険・銭谷美幸フェローに聞く
変わらなければ売却も

運用ポートフォリオの脱炭素をどう実現するのか。

銭谷 美幸 氏
銭谷 美幸 氏
第一生命保険運用企画部フェローエグゼクティブ・サステナブルファイナンス・スペシャリスト(写真:鈴木 愛子)

銭谷 氏(以下、敬称略) まずは企業に情報を開示してもらい、温室効果ガス排出量が多ければエンゲージメントをしていく。2050年までにどんな計画があるかも示してもらい、計画がなければ策定するよう働きかけていく。

 日本企業の場合、数字の正確性が重視されるが、海外の企業はざっくりとした計算で出しているところもある。そういったレベル感を伝えながら、正確じゃないから出せないという日本企業のマインドを変えていきたい。

脱炭素に取り組まない企業の株式の保有を減らすことはあるか。

銭谷 エンゲージメントをしても企業の賛同を得られなければ、議決権行使でトップに反対することもあるだろう。それでも変わらない場合は売却もあり得るが、我々は長期投資家として将来にわたって付き合うスタンスだ。企業の考えを尊重するが、取り組みのレベルが低ければ、もっと意味のある高い目標を設定するよう促していく。

ポートフォリオの脱炭素はリターンの増加につながるのか。

銭谷 保険のお客様から預かっているお金なので、利回りは確保しなければならない。きちんとリターンを得られるかどうかは、投資先の選定では欠かせない重要なポイントだ。

第一生命保険は、日本の機関投資家で初めてポートフォリオの脱炭素を打ち出した。

銭谷 保険会社だけでなく他の金融機関も大きな資産を運用している。銀行も地銀を含めて一体的に取り組むことが大事だ。気候変動は今一番喫緊の課題である。地球温暖化は私たちの生活に相当な勢いで影響を及ぼしている。このことに気付くことが大切だ。

 我々投資家だけでなく企業も努力しているが、最終的には消費者に伝わらないと一体となって動かないだろう。50年までの脱炭素は待ったなしであり、健全な危機感を共有する必要がある。